多くのレンズの評価結果です。
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カメラレンズ性能研究室へようこそ

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1.はじめに
 フィルムカメラからデジカメになり、画像をPCで自由に拡大表示出来るため、レンズの性能を容易
に評価できるようになりました。しかしレンズのユーザーレビューを読んでみると「ぬけが良い」
「こってりとした色」「その場の空気感まで表現できる」など定性的な評価が多く見られます。また今
でもズームレンズは単焦点レンズより性能が落ちると思っている人が少なくありません。そしてレンズ
メーカーが公表しているMTF特性図を引用している人は全くいません。これはMTF特性図と実際の
写り方の関係が分からないことが理由ではないかと思います。そこでこの問題を理解するためレンズ性
能評価の研究を始めました。

 MTF特性図に関してキャノンのHPの説明を以下に簡略引用します。『MTFとは、Modulation
Transfer Function の略で、コントラスト再現比によるレンズ性能評価方法です。レンズを「光学信号
の伝達系」と考えた場合、光学系の周波数特性が測定できれば、光学信号が忠実に伝達されているかど
うかを知ることができます。レンズでいう周波数とは、1mm幅の中に正弦的に濃度の変化するパターン
が何本あるかという意味で特に「空間周波数」と呼ばれ、「○○本/mm」と示されます。

 MTF特性図は、横軸が画面中心を0とした画面中心からの距離(単位:mm)、縦軸がコントラスト
となっており、10本/mmと30本/mmのMTF特性が示されています。MTF特性図上の10本/mmの
カーブが1に近いほどコントラスト特性がよく、ヌケの良いレンズとなり、30本/mmのカーブが1に
近いほど高解像力を備えたシャープなレンズとなります。一般的に10本/mm(コントラスト)のMTF
特性が0.8以上あれば優秀なレンズと言われています。』(図1参照)


                 図1.MTF特性図の見方
    キャノンのMTF特性図(HPより引用)は、絞り開放(黒線)に加えてF8(青線)がある
   ため、ごちゃごちゃして見にくくなっています。まず第1に絞り開放のコントラスト
   (黒くて太い実線と点線)だけを見ることにします。これだけでもおおよそレンズの評価が
   可能です。どのレンズメーカーのMTF特性図にも必ずこの線が含まれています。

2.MTF特性図の実際例
 図2〜3に2種類の標準ズームのMTF特性図(キャノンのHPより引用)を示します。それぞれ8種
類の線が画かれているので赤丸印を付けた絞り開放のコントラストだけに注目してください。図2と3
を比較すると図2のレンズの方が多少性能が良さそうです。しかしこのグラフだけでは、図2のレンズ
が十分満足できるのかどうか分かりません。また図3のレンズがどのくらい劣るのかも分かりません。
やはり実際に撮影した画像を見てから評価したくなります。


 図2.MTF特性図1
  標準ズーム1
  EF24-70mm F4L IS USM
  φ83.4×93mm 600g
  12群15枚
  絞り開放のコントラスト
  (黒くて太い実線と点線)
  に赤丸印を付けました。


 図3.MTF特性図2
  標準ズーム2
  EF24-105mm F4L IS USM
  φ83.5×107mm 670g
  13群18枚
  絞り開放のコントラスト
  (黒くて太い実線と点線)
  に赤丸印を付けました。

3.画像評価方法の実際例
 レンズ評価のために実際に画像を撮影してみる方法は意外と簡単ではありません。以下に今まで試し
た評価方法を述べてみます。

 3.1.ISO_12233チャートを使用する

   図4.ISO_12233チャート
    ISO_12233チャートを紹介します。1mmに
   何本縞模様が分解できるか(分解能)を調べる
   ことができます。しかし数値だけでは分かり
   にくいから実際の画像を見てみたいのに、ま
   た新たな数値(分解能)を求めることになって
   しまいます。

 3.2.屋外で景色などを撮影する
   実際に公園などに出かけてビルや樹木を撮影してみました。しかし広角レンズから望遠レンズま
  で、それぞれ被写体が異なってしまうため、同じ基準で評価ができません。また屋外は晴れ/曇り、
  太陽光線のあたり具合、季節などによって被写体の状況が変化します。

   天文雑誌には星野写真を撮影してレンズを評価するページがあります。星野写真はいかに恒星が
  点像に写るかが重要なので、視野四隅の拡大画像が表示されています。ポイントはコマ収差により
  伸びてしまう恒星像がどこまで絞れば点像に近づくかが示されています。ただ天文雑誌の著者も述
  べているように、光害の無い場所に、月明かりが無く快晴のときに出かけていく手間がたいへんで
  す。やはり室内で適当な撮影方法を見つけたくなります。

 3.3.顔の写真
   評価チャートには標準顔写真もありますが、印刷した段階で階調が大きく損なわれてしまいます。
  本物の顔をテストに使うことはできないので、その代わりとして人形を使うことを思いつきました。
  これが思いの外良かったので、いろいろと試してみて今日に至っています。

   人形はひな人形が秀逸です。こけしのように目鼻を筆で塗っただけではコントラストが十分生じ
  ません。ひな人形は目、鼻、口などを彫刻刀で彫ってあります。顔も曲線で作られています。これ
  らによりくっきりした陰影やグラデーションが生じますので、微妙な写り方の違いによりレンズの
  評価がしやすくなります。

   同じ条件で評価するためにはセンサーサイズ、レンズ焦点距離が変わっても人形を同じサイズで
  撮影する必要があります。実際には「センサー上での人形の顔幅/センサーの横幅≒1/90」に
  なるように撮影しています。またセンサー上で中心から周辺になるに従って画質はわるくなってい
  きますので、これらも表現したくなります。本研究では、以下の3カ所を撮影することにしました。
  これにより各レンズを同じ条件で評価できるようになりました。
    1)中心から左端までの2/3の位置‥‥この位置で開放からF11まで撮影し、F値による
     画質の違いを調べました。(図5の@〜C)
    2)センサー左端‥‥‥F5.6で撮影しました。(図5のD)
    3)センサー左下端‥‥F5.6で撮影しました。(図5のE)
    備考1)テストした全てのレンズにおいてF11以上で回折により画質が低下しました。このた
       め絞りによる画質変化のテストはF8またはF11までで良いことになります。
    備考2)多くのレンズで最高画質はF5.6でした。高品質レンズではF5.6とF8がほとん
       ど同じでした。開放F5.6のレンズではF8が最高画質でした。


 図5.人形の顔写真をまとめて並べて画
    質の違いを一覧できるようにした
    「まとめ写真」の模式図です。
     @〜Cは視野中心から左端まで
    の2/3の位置に被写体(人形)を
    置いて撮影したもので、それぞれ
    F4〜11です(F値はレンズに
    よって異なります)。
     Dはセンサー左端、Eはセンサー
    左下端に被写体を置いてそれぞれ
    F5.6で撮影しました。



 図6〜9の人形の顔写真を見ると「EF24-70F4L IS USM」は全域で良像であることが分かります。
一方、「EF24-105F4L IS USM」は開放(F4)及び視野周辺で明らかな画質低下が分かります。この
ためキャノンは2016.11.13に新型を発売しました。長さ107mm→118mm、重さ670g→795g、実売価格
98,000円→134,000円になっています。新型レンズはまだテストしていません。


    図6.カメラCanon6D(35mmfull)               図7.カメラCanon6D(35mmfull)
       レンズEF24-70F4L IS USM → 24mm撮影            レンズEF24-105F4L IS USM → 24mm撮影
       全ての写真が安定した良像。                 視野左下端は明らかに画質が低下している。


    図8.カメラCanon6D(35mmfull)               図9.カメラCanon6D(35mmfull)
       レンズEF24-70F4L IS USM → 70mm撮影            レンズEF24-105F4L IS USM → 70mm撮影
       全ての写真が安定した良像。                 絞り開放(F4)及び視野周辺で画質が低下している。


4.課題
 カメラレンズの性能を人形の顔を使って評価する方法で一定の成果が得られましたが実は大きな問題
が残っています。人形の顔をセンサー上に同じサイズで撮影するためには、レンズの焦点距離が長くな
ると人形とカメラの距離を長く取る必要があります。現状では部屋の広さの限界のためレンズの焦点距
離100mm程度までしか撮影できません。そこで幾つかの方法を試しましたが、最終解決には至って
いません。

 4.1.人形を写真に撮り、縮小プリントして被写体として使う
   1/2、1/3、1/4に縮小したプリント作って壁に貼り、撮影テストを行いました。しかし
  プリントを撮影したのでは、コピーのコピーの様なもので階調が失われて、とても性能評価には使
  えませんでした。


   図10.1/2、1/3、
       1/4に縮小した
       プリントの様子



 4.2.小さい人形を使う
   標準の人形の顔幅は約25mmです。小さな人形を探して顔幅8mmのものを使用してみました。
  それなりに写るのですが、被写体が違うとレンズ同士の比較はとても行えないことが分かりました。


     図11.小さい人形による撮影例




 4.3.標準の人形を広い公園に持ち出して人形とカメラの距離を長く取れるようにする
   レンズの焦点距離100mmの場合、人形とカメラの距離は約8mになります。もし焦点距離
  500mmの場合だと約40m離れたところから撮影することになります。広い公園で撮影は行え
  るのですが、室内と屋外では人形への照明が大きく異なります。室内では天井からスポットライト
  的に照明するため人形の顔に陰影が生じます。しかし屋外の場合、晴れ/曇り、太陽の位置によっ
  て大きく異なりますが、全天から光が降り注ぐことになります。すると陰影のない、のっぺりした
  顔に写ります。これはレンズの性能評価には適していません。図12、13を参照ください。
   とは言え、現状はこれ以上の方法を思いつきませんので焦点距離100mm以下は室内、以上の
  ときは屋外で撮影する方法しかありません。そして室内で撮影した画像は室内同士で比較し、屋外
  は屋外同士で比較することになります。ただし慣れれば相互の比較もできるようになりそうです。


  図12.カメラCanon6D                      図13.カメラCanon6D (図12と13は同じレンズ、焦点距離)
     レンズEF70-300mm F4-5.6 IS II USM → 70mm撮影        レンズEF70-300mm F4-5.6 IS II USM → 70mm撮影
     室内にて撮影 (全ての写真が安定した良像)          屋外(公園)にて撮影


5.レンズ同士の比較
 seeing法により2つのレンズ同士の優劣を点数化してみました。結果を表1に示します。2つのレン
ズ同士の比較を多くの組み合わせで行うことにより、多くのレンズ同士の比較が可能になります。結果
を表2に示します。

表1.類似レンズの画質比較(seeing法 左レンズが右レンズより '-':劣る / 0:同じ / '+':優る)
    1:わずかに差がある  2:差がはっきり分かるが大きな差では無い
    3:やや大きな差がある 4:かなり大きな差がある
  今回は全てキヤノン製カメラ・レンズを評価しました。フルサイズ用レンズをフルサイズカメラで
 撮影した場合は(ful)、APS-Cカメラで撮影した場合は(aps)と表記しました。APS-C用レンズをAPS-C
 カメラで撮影した場合も(aps)です。
 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
   左レンズ     |   右レンズ    焦点距離別(左レンズ|右レンズ):±評価
 16-35F4L     ful | 24-70F4L     ful  24|24:-1  35|35: 0
 16-35F4L     ful | 24-105F4L    ful  24|24:+1  35|35: 0
 24-70F4L     ful | 24-105F4L    ful  24|24:+1  35|35:+1  70|70:+2
 70-300F4-5.6U  ful |100-400F4.5-5.6LUful  70|100:0  300|400:0
 70-300F4-5.6U  ful | 24-70F4L     ful  70|70:+1
 16-35F4L     ful | 10-18F4.5-5.6STM aps  16|10:+4  24|18:+4  35|18:+4
 16-35F4L     ful | 10-22F3.5-4.5  aps  16|11:+1  35|22:+3
 16-35F4L     ful | 16-35F4L     aps  24|16: 0  35|24:+1
 16-35F4L     ful | 17-55F2.8    aps  24|17:+1  35|24: 0
 24-70F4L     ful | 24-70F4L     aps  35|24:+1  70|35:+2  70|70:+2
 24-70F4L     ful | 17-55F2.8    aps  24|17:+2  35|24: 0  70|55: 0
 10-18F4.5-5.6STM aps | 10-22F3.5-4.5  aps  10|11:-2  18|22:-2
 10-18F4.5-5.6STM aps | 18-55F3.5-5.6STM aps  18|18:-3
 15-85F3.5-5.6  aps | 18-55F3.5-5.6STM aps  15|18:+1  35|35: 0  76|55:-2
 16-35F4L     aps | 24-70F4L     aps  24|24: 0  35|35:+1
 17-55F2.8    aps | 10-18F4.5-5.6STM aps  17|18:+3
 17-55F2.8    aps | 10-22F3.5-4.5  aps  17|22:+2  24|22:+3
 17-55F2.8    aps | 18-55F3.5-5.6STM aps  17|18:+1  35|35:+2  55|55:+1
 17-55F2.8    aps | 18-55F4-5.6STM  aps  17|18: 0  35|35: 0  55|55: 0
 17-55F2.8    aps | 24F2.8STM    aps  24|24: 0
 17-55F2.8    aps | 55-250F4-5.6STM aps  55|70:+1
 17-55F2.8    aps | 16-35F4L     aps  17|16:-1  24|24:+1  35|35: 0
 17-55F2.8    aps | 24-70F4L     aps  35|35:+2  24|24:+1  55|70:+2
 18-55F3.5-5.6STM aps | 16-35F4L     aps  18|16:-1  35|35: 0
 18-55F3.5-5.6STM aps | 24-70F4L     aps  35|35: 0  55|70:-1
 18-55F4-5.6STM  aps | 18-55F3.5-5.6STM aps  18|18:+1  35|35:+2  55|55:+1
 55-250F4-5.6STM aps | 15-85F3.5-5.6  aps  70|76:+2
 55-250F4-5.6STM aps | 18-55F3.5-5.6STM aps  70|55:+1
 55-250F4-5.6STM aps | 70-200F4L    aps  70|70:+1
 70-300F4-5.6U  aps | 55-250F4-5.6STM aps  70|70:+1  300|250:0

表2.全てのレンズの評価
   この評価はA3ノビなどに大きく拡大した場合に適用されます。2L以下であればほとんど差は
  分かりません。(#:撮影法が定まる前の写真のため左下端コーナーが正しく評価されていません)
 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
   +5 | 70-300F4-5.6U  ful | 100-400F4.5-5.6LUful |          |
   +4 | 24-70F4L     ful |            |          |
   +3 | 16-35F4L     ful | 16-35F4L     aps |          |
   +2 | 24-105F4L    ful | 17-55F2.8    aps | 18-55F4-5.6STM aps|
   +2 | 24F2.8STM    aps | 70-300F4-5.6U  aps |          |
   +1 | 55-250F4-5.6STM aps |            |          |
   0 | 18-55F3.5-5.6STM aps | 24-70F4L     aps | 70-200F4L  aps #|
   -1 | 15-85F3.5-5.6  aps |            |          |
   -2 | 10-22F3.5-4.5  aps #|            |          |
   -4 | 10-18F4.5-5.6STM aps |            |          |


 自分がレンズの性能を知りたくて始めた研究であり、ときどきユーザーレビューに投稿したりしてき
ましたが、せっかくなのでまとめてHPで公表することにしました。これからもさらに改良、充実を図
るつもりです。どうぞご期待ください。



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