第154回流星物理セミナー  開催 2020年02月02日(日)  場所 渋谷区立勤労福祉会館  参加 25名 1.小流星群の活動曲線(小関正広)  IAUMDC流星群表の極大時は観測データの平均値であって流星の最頻時では ない。しかも1〜2年の観測から求めた数値が掲載されている場合もある。 SonotaCoネットのデータにより、24の小流星群について輻射点分布と活動曲 線を作成した。輻射点の半径3度の密度と、3度から6度の密度を求め、 その比の太陽黄経3度毎移動平均を求める。そして横軸を太陽黄経、縦軸を 上記密度比としたときに最大となったところを極大とすると良さそうだ。 2.流星群の活動期間を数理的に決める一考察(河越彰彦)  何個流星が出たら活動開始/活動終了とするのか。流星の活動開始から終 了までは正規分布曲線に近い形となる。正規分布だとすると2σ、3σなど を活動期間とする案が考えられる。オリオン群のTV観測結果を使うと2σが 適当な感じがする。私見ではHR3〜4が境界だと考えている。 3.シミュレーターを用いた多素子アンテナの製作(神作哲夫)  シミュレーターを用いてVOR帯(108〜118MHz)(飛行機の誘導用電波)用の アンテナを製作しました。VOR帯での観測は50MHz帯での観測には成果の面 でかないませんが、学生・生徒さんの観測に向いた側面があります。送信所 が何カ所もあるので受信機もいくつか用意して、それぞれが異なる周波数で 観測を楽しむことも可能なわけです。 4.RaspberryPi4+SDRを使った流星電波観測システム(武田誠也)  RaspberryPi4は小さなマイコン。SDRソフトを使って流星エコーを検出す る。ビーコン波をSDR(ソフトウエアラジオ)で音に変えて、RaspberryPi4で 分析する。50MHz帯の機材は無くなって来ているので、この方式は安く用意 できる。 5.フルハイビジョンシステムでの流星観測(関口孝志)  レンズは85mm(軌道計算用)、50mm(スペクトル用)を使用。スペクトル は、鉄が緑色の細かい複数のラインで見えるようになった。しかし3台分で 110万円かかった。そしてたくさん撮れ過ぎて、ノイズ流星の除去に毎日 追われている。 6.定年から始めた僕らの流星観測(2019ふたご編)(永井和夫)  11名で17台のワテックカメラを運用している。横浜から小田原の観測者な ので交差角が小さいのが難点。2019年12月に軌道の求まった流星が510個。 7.ふたご群の輻射点拡大撮影(重野)  今回は35mm版111mm相当で4K動画を撮影してみたので紹介する。すぐ近く に月齢18.5の月があったが、それほど影響はなかった。  次回開催予定 2020年7月5日(日) −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 第153回流星物理セミナー  開催 2019年10月6日(日)  場所 渋谷区立勤労福祉会館  参加 26名 1.スペクトル観測と結果 2018.10-2019.08 (やぎ群やペルセウス群も) (関口孝志)  Mg(518)-Na(589)-Fe(525-545)、3元素のスペクトルの流星群ごとの強度比 を調べている。8台のカメラで、約1年間に約1,100個のスペクトルが得られ、 745個を解析した。  意見:350nmまで写るレンズを使うと良い。 2.SonotaCoネットのALL_SHOWER_NAMES(ASN)について(改定・増補への提言) (小関正広)  特別な改訂を要しないもの、更新すべき流星群、新規登録することが望ま れる流星群、削除が適当と思われる流星群、ASNでIMSのNo.を持たない流星群 を検討した。  輻射点α,δは日々移動するが、λ-λ◎,βであれば日々移動が少ないので 今後は後者で表すべきであろう。SonotaCoネットには2009年以降に登録された 輻射点が使われていない。半径3度、ゆるく見て半径6度を輻射点の範囲とす べきであろう。CMOR(電波観測)の輻射点は暗い流星用なので、ビデオ流星では 検出できない。よって輻射点判定用に使うべきでない。 3.定年から始めた僕らの流星観測(永井和夫)  平塚市博物館の流星分科会で活動している。観測者9名、各自自宅でカメラ を稼働している。さらに博物館屋上に14台のカメラを稼働している。解析は UFOorbit2。軌道が求まった流星は7/4〜9/17で613個。ペルセウス群の結果を 天文回報の発表及びスイフトタットル彗星の軌道と比較してみた。 4.2020流星会議〜あの年から9年再び玉造荘(殿村)  2020年8月22/23(土/日)研究発表は古川黎明中・高校及び川渡温泉玉造荘に て、参加費12,000円。 5.流星観測で使えるニコンマニュアルレンズ(重野好彦)  ニコンマニュアルレンズ「Ai-S Nikkor」は、現在でも5種類が販売されて いる。また多種のレンズが中古市場で流通しており、徐々に価格が下がって いる。単焦点で明るいレンズが多いので35mmカメラで流星観測をするなら お勧めである。古い設計のレンズなので性能をテストしてみた。詳しくは 次を参照 http://msswg.net/lens  次回開催予定 2020年2月2日(日) −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 第152回流星物理セミナー  開催 2019年7月7日(日)  場所 渋谷区立勤労福祉会館  参加 31名 1.流星スペクトル研究集会(極地研)で出た課題の解決方法(永井和夫)  飽和を確認してから測定→グラフを目視で確認。分光感度補正。比較明合 成で良いのか→複数フレームが加算されない、加算合計が良い、流星は点と 尾。回転や傾きでレベルが変る→RSpecでは問題無さそう。輝線強度測定は 複数波合成で求める→Feは6波の合成。ガンマ逆補正をしないとレベルが 正しくない。天体測光ではjpgを使ってはいけない→著者はBMP。ブラックボ ディの影響→恒星(連続スペクトル)では必要だが、流星では不要と思われる。 機材はsonyα7sを使用しているが、モードによりいろいろなガンマになる。 意見:ガンマを1に設定できるCCDを使う方法もある。 2.自動観測によるスペクトル観測結果(関口孝志)  流星スペクトルをたくさん撮影(現状は495個)、測定、分類、解析する。 sonyα7sやWatecを使用。Na/Mg/Feの組成比を求めた。群別・軌道傾斜角・Tj との関係。Tjは木星軌道との関係だが、内容が不明。計算式は分かっている。 加えて近日点距離との関係などを求めてみた。 3.重野DVDで遊ぶPart2(続編)(小関正広)  一般的には、測定点の整約の際に3次以上の回帰曲線(または三角関数) を当てはめることができなければ、大気減速を無視せざるを得ない。重野DVD (CCD観測より長焦点のレンズを使用したII観測)の比較的明るい群流星に ついて手作業で測定を行ったところ、基本的には15以上の測定点(0.5秒以上 の継続時間)であれば大気減速は検出可能であることが見出された。 4.SonotaCoネットとEDMOND(小関正広)  EDMONDとSonotaCoネット両者の基本的な特性の比較と留意点を考察した。 両者ともに似た機器を使用し、同じソフトで処理しているが違いがある。 散在流星に関してSonotaCoネットは高速の流星を多数捉えている一方で低速 の流星は少ない。一方、EDMONDは逆の傾向がある。その他、高度分布、群判 定にも違いが見られる。両者を統合して研究する場合には注意が必要だ。 EDMONDは2016年に主要メンバーが辞めたため、新規の公表が停止している。 5.1972年流星会議(小川誠治)(資料無し)  古い写真を整理していたら、仙台流星会議(1972.8.2)が見つかったので 紹介する。この年はジャコビニ群の大出現が予想されており、光害反対運動 が盛り上がった。 6.流星風景写真(及川聖彦)(資料無し)  数々のすばらしい流星写真を紹介した。またペルセウスの音らしき動画を 紹介。 7.電波観測機材(野瀬稔)(資料無し)  従来の電波受信機は徐々に販売中止されている。一方、SDR (Software Defined Radio)が販売され始めた。SDR#ソフトをPCにインス トールして使用する。中国製のAIRSPYminiがマルツオンラインから16,000円 で販売されている。 8.今年のジャコビニ群(佐藤幹哉)  2017年ウズベキスタン、2018年アイスランドでの動画紹介。 2019年の予報(流星数は少ない模様):2019.10.08/09 23:19JST(Δr:-0.0013) 00:25JST(Δr:-0.0075) 9.MSS資料集ホームページ(2019年更新)(重野好彦)  ここ1年分の資料集を追加した。HPの構成を変更し、1ページで全体を 表すようにした。プロジェクターで内容紹介。 http://msswg.net 参照。  次回開催予定 2019年10月6日(日) −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 第151回流星物理セミナー  開催 2019年2月3日(日)  場所 渋谷区立勤労福祉会館  参加 25名 1.重野DVDで遊ぶPart2(小関正広)  ビデオ流星の位置測定を手で行ってみると、いろいろと気づくことがある。 火球の経路はどこを測定するのが良いのか、多くの流星は観測者に近づいて くるので徐々に角速度が速くなる、輻射点が天頂付近にある流星と地平付近 にある流星ではどちらの精度が良くなるかなどである。これらを考えながら 測定してみることも楽しみである。 2.モノクロの流星TV分光観測における輝線波長同定とレスポンス補正方法 (永井和男)  SA-200回折格子(200本/mm)、CMOSカメラIMX225(Sony)+8mmレンズで撮影 したところ、毎日数個のスペクトルが得られるようになった。IMX225は400〜 1000nmが写ってしまうので、輝線がどの波長なのかよく分からない。そこで シリウスを撮影して参考にした。さらにVバンドフィルター(500〜650nmを 透過)を付けて黄色しか通さないようにした。  意見:機材の仕様が分かっていれば、計算で波長が求められるのでは。 3.自動観測による流星スペクトルの観測と分類(関口孝志)  8台のカメラで4ヶ月で450個以上のスペクトルが得られた。そのうち 66個を解析した。解析ソフトはRspec(回折格子とセットで約5万円)、 BASSProject(Free)を使用した。Fe-Mg-Naの三角ダイアグラムを作成し、 群別の分類を調べた。 4.太陽系外流星(海老塚昇 重野好彦)  重野がI.I.で同時観測したPer,Ori,Leoでは離心率1を超えるものが一定数 見られる。撮影レンズ焦点距離毎の分布、誤差などを調べて太陽系外流星の 候補を探した。詳しい分析の結果、3,886個中15個が系外流星の候補として 抽出された。15個の候補の到来方向を天球上にプロットしたところ、8個が 銀河面から30%の面積範囲からであった。このような分布を起こす確率は 約3%(3σ)である。(f=85, F/1.2レンズ+I.I.で撮られた2,222個の散在流 星のうち、Vh>44km/s, ΔVh<1σは10個(0.45%)、Vh>46.6km/s, ΔVh<3σ は2個(0.09%)であった。) 5.ふたご群・しぶんぎ群輻射点拡大撮影(重野好彦)  今まで35mm版200mm相当で4K動画を撮影してきたが、85mm相当、50mm相当 で撮影してみたので紹介する。 6.ビーコン波の送信について(中根純夫)  日本のアマチュアによるビーコン送信の現状について、2017年にセルビア のPetnicaで開催されたIMCでの紹介した内容を記載した資料を配布した。 ##Past, present and future of Beacon signal transmission for meteor radio observation in Japan##  1996年から20年以上、前川公男さんによりJA9YDBにて鯖江市の福井高専か ら、そして一昨年からJH9YYAにて永平寺町の福井県立大学からビーコン波が 送信されている。現在、福井高専からの送信は機器整備中で停波しているが 再開を予定している。また、国立国会図書館で入手した1934/1965/1971年発 行の一般雑誌に掲載された流星関連記事のコピーが回覧され、アマチュア流 星電波観測がたどってきた概要と、当日参加者を含め多彩な方面から電波観 測に興味のある皆様が現在おられること、そして、アマチュア流星電波観測 のこれから先への技術展望の紹介があった。 7.L計画Uへの提言(泉潔) (Leonid prediction for the period 2001-2100 Mikhall Maslov, wgn 35:1 2007)より。次の回帰では2001年のようなZHR1,000以上は望めない ようだ。またどの予報も日本ではほとんど見られない。そんな中で2022年の 予報は出かけてみる価値がありそうだ。 2022.11.19 06UT(15JST) ZHR250-300 2033.11.17 21UT(06JST) ZHR300-400 2034.11.18 03UT(12JST) ZHR400-500 2034.11.18 22UT(07JST) ZHR150-250 2035.11.20 06UT(15JST) ZHR300-350  次回開催予定 2019年7月7日(日) −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 第150回流星物理セミナー  開催 2018年10月7日(日)  場所 渋谷区立勤労福祉会館  参加 15名 1.流星の軌道計算における速度誤差の求め方(第1報)(重野好彦)  流星の切断点と観測速度の説明。今後、輻射点の誤差による速度変化、 大気減速を検討したい。  意見:流星は発光を始めると大きく大気減速を受けるので、発光点での 速度を観測速度と見なしても問題ない。 2.流星電波観測の結果と課題(茨城大学 石村周平)  8月、9月の観測結果の報告。HROFFT(時間スケール1分)で解析している が、Eスポを区別するため目視で検出した。8月13日のペルセウス群は増 加が見られた。8月全体の流星数の時間変化を調べたところ、深夜0時頃が 多く、お昼頃が少ないことが分かった。HROFFTを改良したい。 3.流星電波干渉計の開発について(武田誠也)(資料無し、PPのみ)  1)宮城・東京・静岡・京都・高知・宮崎の受信データをリアルタイムで見 ることができる電波観測網を構築した。2)電波干渉計により流星位置の検出 を目指している。天頂+東西南北5入力のアンテナから25ms毎にFFTを取り 位相差を求めている。8月の観測で約200流星が得られ、ビデオ観測との 同時流星が3個あった。 4.「新流星群」とは(小関正広)  CMOR(カナダの流星レーダー)の報告を見ていると新しい群活動を見い だすことがある。新流星群というためには、1)Δλs<10の期間の輻射点を 用いる、2)輻射点の分布密度がD3(3度内の輻射点数)/D6(6度内の 輻射点数)>2、3)3度内の輻射点数>20であることを判定基準とすべき だろう。 5.この夏の流星画像の紹介(中川)(資料無し)  マイナス等級のデジカメ流星画像の頭部のヒゲのようなキラメキはなにか。 6.この夏の流星スペクトルを眺める(永井和男)(資料無し、PPのみ)  ブレーズド回折格子、300本/mm→140本/mmに変更し、スペクトルが写り やすくなった。UFOキャプチャーで検出している。カメラもX4からCCD カメラに替えた。8月だけで14個撮影できた。スペクトルはRspecで解析 している。 (パワーポイントを入手していないのでおそらく間違い有り)  次回開催予定 2019年2月3日(日) −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 第149回流星物理セミナー  開催 2018年7月1日(日)  場所 渋谷区立勤労福祉会館  参加 31名 1.単純明快な流星群の定義についての提言(小関正広)  ビデオ観測でペルセウス群、ふたご群の輻射点の広がりを見ると半径3度内に 入っている。そこで3度内の輻射点数と、6度内の輻射点数の比を用いることを 考えた。この比が高いほど、確かな流星群であるウエイトが高いと考え、IAUMDC の結果に当てはめて確かめた。 2.アンドロメダ座流星群の回帰と2018年の観測の重要性(泉潔)  19世紀には、しし群とともによく知られた流星群だった。母彗星はビエラ彗星 と言われ、1741年以降の古記録に大出現が見られる。2018年12月にダストトレイル が地球に接近する。予報は太陽黄経254度、2018年12月6日(木)20時JST(月齢29)、 輻射点24,+50(カシオペア座)。 3.RSpecソフトウエアを使った流星スペクトル分類の考察(永井和男)  レンズの前に回折格子(ブレーズド300gr)を貼る。回折格子シートレプリカ500 (ケニス社)、Amazon:4,817円。CanonX4、28mm、ISO:6400。自宅マンションのベラ ンダから撮ると街灯が写る。フードを作って光害を防いでいる。分光解析ソフトは いろいろあるが、RSpecソフト(有料)はスリットを使わない観測(ゼロ次)に対応 しているので流星向きである。配布資料無し。パワーポイントのみ。 4.アイテック社の受信機の改造(野瀬稔)  福井県鯖江市の福井高専から送信されていた 53.750MHzの電波(ビーコン)が 停波している。また、現在、福井県永平寺町の福井県立大学より、53.755MHzの 電波(ビーコン)が送信されている。このビーコン波を受信できるようにするため、 アイテック受信機の改造と調整を受け付けることとした。詳しくは下記をご覧 いただきたい。 http://www5f.biglobe.ne.jp/~hro/Operation/index.htm#remodel 5.パナソニックLUMIX-GH5Sによる流星動画撮影(及川聖彦)  マイクロ4/3センサー。1つのピクセルに高感度用と低感度用があり、高感度の 画質が良い。感度10万でも流星像がきれい。 6.長良隕石の落下情報に関する考察(渡邉美和)  2018年3月に岐阜県で隕石が確認された。過去に記録された61例を検討した。 1779(安永八年).02.22に現地付近で落下らしき記録があった。 7.しぶんぎ群輻射点拡大撮影(重野好彦)  5等より明るい流星全てに短痕が見られた。暗い流星には見られなかった。 8.Oumuamuaからの流星がもし出たら(重野好彦)  太陽系外小惑星Oumuamuaからの流星の可能性をωアジャストメント法で調べてみ た。昇交点側は輻射点がろくぶんぎ座で10月17日頃、地球との距離が0.318AU。 降交点側は輻射点がわし座で5月27日頃、地球との距離が0.555AUと流星の出現は 望めそうもない。ただし地心速度約59km/s、軌道傾斜角123度であり、ペルセウス群 に類似していることが分かった。 9.MSS資料集ホームページ〜2018年度更新〜(重野好彦)  最近3回の資料を http://msswg.net に登録しました。ここのところ、1年間の ユニークアクセス数は約500PCで安定している。「観測報告と流星用プログラム」 に登録しているD判定プログラムを64ビットでも動作するように改訂しました。 10.RSpecソフトウエアの動作紹介(近藤)  プロジェクターで動作紹介。資料無し。  次回開催予定 2018年10月7日(日) −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 第148回流星物理セミナー  開催 2018年2月4日(日)  場所 渋谷区立勤労福祉会館  参加 28名 1.ふたご群輻射点拡大撮影(重野好彦)  ペルセウス群の場合は流星最微7等まで全ての流星に短痕が見られた。ふたご群の 場合はまれに流星最微7等まで短痕が見られる。 2.太陽系外からの流星(海老塚昇 重野好彦)  Hajdukovaによると日心速度46.6km/s以上ものを太陽系外流星とした場合に、 IAUMDCの銀塩写真の同時観測では4581流星のうち59流星(1.3%)が太陽系外流星である 可能性が高いとしている。SonotaCoネットのTV観測では14,763流星のうち日心速度 46.6km/s以上が0であるが、軌道傾斜角が90度に近い2流星が太陽系外流星である可能 性が高いと主張している。そこで重野他のTV観測の軌道結果を調べてみた。3,886 流星のうち日心速度46.6km/s以上の9流星のうち、8流星が誤差を考慮して も太陽系 外流星と言えそうである。 3.定年から始める流星観測(永井和夫)  平塚市博物館の天体観測会サークルに流星分科会がある。流星写真から経路の 赤経・赤緯の測定、ステレオネットによる軌道計算を勉強している。一眼デジカメ と回転シャッターで始め、今はビデオで観測している。動画はUFOキャプチャでは なく、フリーの監視ソフトCONTACAMでキャプチャしている。軌道計算はUFOアナライ ザーを使用。最近は分光観測も始めた。解析はRSpecで行っている。 4.2017年10月27日の突発群についての考察(関口孝志)  10月26〜27日、太陽黄経213.29〜213.97に4流星が集中した。輻射点330,+2、 VG9km/s。2018.1.19にNASA all-sky camerasで8火球が輻射点185.2,+0.4、 Vo68.2km/sであった。 5.SonotaCOネット10年間の観測で見た"確定群"(小関正広)  見え方の観点から6類に分けた。1)基本群(全ての観測方法で得られている)、 2)光学群(電波では捕らえ難い)、3)電波群(光学観測では捕らえ難い)、4)史的群・ 周期群(過去に捕らえられた)、5)昼間群・南天群(北半球の光学観測では困難)、 6)不詳群(明確に認められない) 6.GM管で測ったビルの屋内自然放射線(ミューオン)強度の階層依存性(素案) (松澤孝男)  宇宙線の検出には、建物のコンクリートなどから出る放射線の影響を考慮しな ければならない。ビルの1階から11階まで測ったところ、徐々に宇宙線が増加 していることが分かった。参考(Bruno Rossi, Cosmic Ray, McGrow-hill)  次回開催予定 2018年7月1日(日) −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 第147回流星物理セミナー  開催 2017年10月1日(日)  場所 渋谷区神宮前穏田(おんでん)区民会館  参加 21名 1.ペルセウス群輻射点拡大撮影(重野好彦)  4K動画200mm相当で輻射点の拡大撮影を行っている。昨年と較べてシャッター 1/125sec→1/30sec(露出時間を4倍にした)、ISO:10万→5万(感度を下げたことで画質 が改善された)、恒星最微等級7.5等→9.0等に向上した。 2.オリオン群の尻尾からしぶんぎ群の先駆けまで−CAMSvsSonotaCoNet(小関正広)  Jenniskesらの論文でオリオン群に連なる一連の活動を「オリオン群の尻尾」と 名付けている。8月のエリダヌス群から始まり10月のオリオン群以降まで、10の 流星群に分割している。その他、Jenniskesのやり過ぎを指摘してみた。 3.放射点位置の数値計算2(長沢工)  点を直線に置き換える、直線を点に置き換える方法は射影幾何学と言い、現在では 教科書も無く勉強することができない。前回は平面上の話をしたが、天体では球面上 での話をしなければならない。直線は大円に置き換え、さらに大円極に置き換えられ る。いくつかの流星経路を表す大円があるとき、放射点は、それらの大円に対する天 球上の距離の二乗和が最小になる点を求めれば良い。  余談、10年前から食道がん→右肺がん→左肺がんとやって85歳になった、医者 からは手術・抗がん剤は無理だと言われてしまった。「オリンピックまでは?」と聞 いたところ、医者は答えてくれなかった。みなさんご承知おきください。 4.ペルセウス群の撮影中に−10等の火球が出現し流星からの音らしきものを記録 (及川聖彦)(配布資料無し)  大田原付近に快晴の観測場所があった。魚眼レンズで動画撮影中に−10等の火球 が現れ、爆発と同時に小さい音で「ポン」または「パン」と聞こえた。カメラによっ ては「パンパン」と2回聞こえた。観測時に耳では聞こえなかった。後で動画を見て 音に気づいた。  柳信一郎氏から偶然に流星と同時に飛んだ虫の羽音が紹介された。小林美樹さんか ら2年に1回程度、自分の耳で聞いているとの意見があった。流星が光るほんの少し 前に聞こえることもある。 余興、アメリカ日食報告 5.2017年アメリカ日食報告(重野好彦)  1981年7月31日シベリア日食以来、36年21日ぶり2回目の皆既日食に出かけてきた。 シベリア日食の時は多少雲が出て不十分な結果だったが、アメリカ日食は全て快晴で 満足のいく観察ができた。連続撮影をするにあたって、当時はフィルム1コマに多重 露出を行い、1コマでも失敗すれば全てダメになったが、今はデジカメで露出を変え て何コマでも撮影し、後で合成すれば良いので非常に楽になった。 6.アメリカ・オレゴン州・ミッチェルにおける皆既日食観測報告およびカナダ・ カナナスキスの星空(佐藤忠)  今まで日食に5回出かけ、3勝2敗だった。今回は5泊7日のツアーに参加し、 デジ一眼で外部コロナを撮影することを主目的とした。晴れて良い写真が撮れた。 7.アメリカ横断皆既日食 IN BOYSEN WY (小林美樹)  4泊6日のツアーだったが、ホテルの変更があり、かなり高額になった。皆既中に 見えると思われる恒星を調べて行ったが、金星(-4.0等)、シリウス(-1.46等)しか見 えなかった。ダイヤモンドリング中に人の影にシャドーバンドが見えると言うこと で、ついたてを立てて動画を撮影したが、良い画像は得られなかった。 8.ワイオミング州ジャクソンホール皆既日食観測(柳信一郎)(配布資料はツアー 日程表とコロナ拡大写真)  6泊8日のツアーに参加した。4K動画で皆既前後を拡大撮影した。他に写真の 紹介。 9.アイダホ州レクスバーグでの観測(是恒邦通)(配布資料無し)  明治大学天文部OB会のツアーである。2年前には観測地を決めていた。 6泊8日。拡大撮影。動画、静止画。ピンホールの陰の経過を撮影した。  次回開催予定 2018年2月4日(日)         穏田(おんでん)区民会館が閉鎖となるため新しい会場を探します。 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 第146回流星物理セミナー  開催 2017年7月2日(日)  場所 渋谷区神宮前穏田(おんでん)区民会館  参加 22名 1.MSS資料集ホームページ http://msswg.net 〜2017年度更新〜(重野好彦)  ユニークアクセス数は、2014年度:928PC、2015年度:480PC、2016年度:503PCだった。 全く別ドメインの大学天文部OB会のアクセス数も、2014年10月頃〜2015年10月頃に その前後と較べて2〜3倍に増加している。2つの別ドメインで同時期にアクセス数 が倍増したのは、検索エンジンのクロール回数の増加であろうか。 2.Canon aps-c 安価標準ズームの進化(重野好彦)  Canonはaps-c安価標準ズームを4種類発売してきた。最初の第1世代,第1.5世代は 解像度、色収差がひどく、非常にがっかりした。第2世代になると、かなり改善され、 第3世代ではコーナーでも解像度が十分良くなった。ただ歪曲収差は簡単に改善でき ないようだ。 3.放射点位置の数値計算(長沢工)  3個以上の流星経路から放射点の求め方を考える。それぞれの経路(直線)をある 方法で点に置き換えると、点は直線上に並ぶ。最小二乗法で直線を求めて点に戻す と、放射点を求めることができる。詳しい計算式が紹介された。 4.CAMSとSonotaCoネットで得られたデータ(小関正広)  CAMSはJenniskensが推進している自動ビデオ流星観測システムであり、カリフォル ニアを中心に、ニュージーランドでも観測されている。カメラの写野は22.5×29.9度 であり、SonotaCoネットで一般に使われているものに較べて狭い。CAMSはJenniskens が論文を書き終えると公表され、2010〜2013年の約11万流星が公表されている。  季節や群ごとの流星数、発光点・消滅点高度の違いなどを調べた。SonotaCoネット とCAMSのデータの精度に優劣は見られなかったが、CAMSの方が低速の流星をより多く 捉えている。ふたご群、ペルセウス群に関して様々な要素を比較した。群の判定方法 が違うため、CAMSよりもSonotaCoネットの方が、群の活動期間が長くなっている。  次回開催予定 2017年10月1日(日) −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 第145回流星物理セミナー  開催 2017年2月5日(日)  場所 渋谷区神宮前隠田(おんでん)区民会館  参加 26名(学生が多数参加くださいました) 1.カメラレンズ性能評価法の研究(重野好彦)  デジカメになり画像をPCで自由に拡大表示出来るため、レンズの性能を容易に 評価できるようになった。しかしレンズのユーザーレビューを読むと定性的な評価 ばかりで、MTF特性図を引用する人は全くいない。これはMTF特性図と実際の 写り方の関係が分からないからだと思われる。そこでグラフや数値ではなく、実際 の写り方を調べて評価してみた。詳細は http://msswg.net/lens を参照下さい。 2.眼視団体観測から得られるもの   −明治大学天文部2016ペルセウス群観測−(小関正広 重野好彦 平泉達哉)  夏合宿において74名でペルセウス群観測を行った。初心者であっても眼視団体 観測が有用なものであることを示し、いくつかの提言を行った。  記録者とタイマー係は流星班が行い、観測者は4名1組で、同時に2組で観測し、 1時間ごとに交代した。予定していたエリア法の星図の方向が山に隠れる、月明かり があるなどして最微等級が大きくずれてしまった。IMOのエリア星図16番で 3個:2.89等、4個:4.67等で大きく違ってくる。3個しか見えなくても4個見えた とする方がより妥当な結果が得られることがわかった。  提案:観測者間の干渉を避けるため、各人が探り書きを行う、4人がそれぞれ違う 方向を向いて観測する方法も考えられる。  次回開催予定 2017年7月2日(日) −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 第144回流星物理セミナー  開催 2016年10月2日(日)  場所 渋谷区神宮前隠田(おんでん)区民会館  参加 16名 1.流星の小話3題(小関正広)  1)IAUMDCの使い方のヒント‥‥1つの群を検索すると古い順に複数表示される。   一般的には下の方の新しいデータを参照すると良い。  2)IMOとの意見交換:続き‥‥輻射点リストは膨張を続け、遅かれ早かれ天球は   輻射点で埋め尽くされるだろう。などなど様々な意見が出されている。また   IMOとしては日本の観測を知りたがっている。  3)3つのD判定の比較‥‥[Southworth-Hawkins]、[Drumond]、   [Valsecchi-Jopek-Froeschle]それぞれの方法で比較してみた。1〜2の方法は   軌道要素を使うが、3の方法は輻射点、速度、時刻を使用する。 2.ペルセウス群輻射点拡大撮影 〜流星本体と流星痕〜 (重野好彦)  2006年以降、ペルセウス群輻射点の拡大撮影を行ってきた。試行錯誤の結果、 ようやくイメージに近い画像を得ることができた。流星本体が消滅点付近に存在する ときの1コマをキャプチャーして1つの流星画像とした。16流星全てが経路上に痕 を残している。 3.流星電波観測解析ソフトの開発について(武田誠也)  電波観測を東京で行っているがノイズが多い。HROFFT、自動検出、ノイズ除去を 行いたい。常時運用し、国際プロジェクトへデータ自動送信したい。プログラムは できており、動作テストを行っている。  次回開催予定 2017年2月5日(日) −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 第143回流星物理セミナー  開催 2016年7月3日(日)  場所 渋谷区神宮前隠田(おんでん)区民会館  参加 31名(東海大、理科大の学生が多数参加くださいました) 1.MSS資料集ホームページ http://msswg.net 〜2016年度更新〜(重野好彦)  ユニークアクセス数は、従来100〜200PC/年程度であった。しかし昨年度は 947PC/年と急増し、今年度は480PC/年と安定した。 2.35mmFullサイズカメラとAPS-Cカメラの感度別画像比較(重野好彦)  35mmFullサイズカメラ(Canon 6D)とAPS-Cカメラ(Canon X7)で、ほぼ同じ画質と なるようにISO感度別に比較してみた。その結果、35mmFullサイズカメラは APS-Cカメラに較べて4倍の感度で同画質となった。この差は非常に大きい。 (注:メーカー、機種により差は異なると思われる) 3.ニコンD500(APS-C相当カメラ)の感度別4K画像比較(重野好彦)  超高感度4K動画(3840x2140ピクセル)の感度別画像比較を行った。 実使用感度はISO:20万までか。  メモリーの消費が非常に大きい→実写123Mbps=55GB/h=512GB/8h。  i7-4600U(2.1〜2.7GHz)のPCで、7種類の動画ソフトを試したが、何れも 4K動画を正常に再生できなかった。再生速度を落とすしかない。 4.流星輻射点の予報:5つの方法による比較<紹介>(小関正広)  母天体と地球軌道は交差しないので輻射点を予想するには母天体の軌道に何らかの 変更をする必要がある。1)近日点調整法(ω法):軌道の形と軌道面傾斜はそのまま。 2)離心率調整法(e法):離心率と近日点距離を変更。3)通常法:母天体と地球の日心 距離が同じになるときの速度、方向を使用。以上、廣瀬秀雄(1951)。以下、長谷川 一郎推奨。4)母天体と地球軌道の最接近点で出現するとし、ω法で計算。5)近日点 方向、軌道の大きさが一定に保たれていると仮定する:D判定を最小にする。6)4)と 同様だが、軌道の変更は5)。7)母天体の昇交点、降交点で出現するとする。 5.2016ペルセウス群の活動が盛んになる(S&T Aug2016)(泉潔)  2016年の予報‥‥Mikhail Maslov(露):極大8月12日12:40UT(21:40JST)、 ZHR150〜160、1479年、1862年のダストトレイル。 Vauvbaillon(仏):8月12日04:56UT(13:56JST)、1079年のダストトレイル。 6.非常に大きな大気現象火球によって出される不可解な音を説明することにおける 進展(小林巌 小林美樹) Colin S L Keay: Progress in Explaining the Mysterious Sounds Produced by Very Large Meteor Fireballs; journal of Scientific Exploration; Vo.7; No4; pp.337-354; 1993. の紹介。  火球と同時に奇妙な音が聞こえる現象は2世紀以上謎であった。現在は「電子音」 と言う言葉が用いられ、火球発生後に聞こえる通常の音とは区別されている。  次回開催予定 2016年10月2日(日) −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 第142回流星物理セミナー  開催 2016年2月7日(日)  場所 渋谷区神宮前隠田(おんでん)区民会館  参加 18名 1.しぶんぎ群輻射点拡大撮影(重野好彦)  超高感度ハイビジョン動画により輻射点の拡大撮影テストを行っている。2016 年1月4/5日に、しぶんぎ群を6個撮影できた。カメラはNikonD4、ISO感度10万、 レンズは135mmF2、写野15.2度×8.6度。だいぶ鮮鋭な画像が得られるようになってき たが、さらに高画質を目指したい。 2.IMOが目指すこれからの流星観測・研究(紹介)(小関正広)  IMOからの度重なる要請で評議委員になることになった。IMOでは議論 (ブレーンストーミング)により今後の展望を検討しようとしている。ダストトレイ ルの理論、流星軌道の進化と母天体の推定、流星軌道の高精度化、ビデオ観測の普及、 スペクトル観測の高精度化、赤外発光の観測、前方散乱による電波観測の限界、低周 波音・電磁波音、月面発光、紫外線観測、流星体の太陽面通過など。  皆様からの提案を受け付けたいので、アイデアのある方は連絡いただきたい。 3.2015おうし群の活動について(泉潔)  木星とエンケ彗星の公転周期の軌道共鳴から流星物質の密集部が作られ、地球軌道 との接近角距離(ΔM)が小さい年には流星の出現数と火球が増加する。2005年 (ΔM=+12度)、2015年(−6度)は大出現となった。次回は2032年 (−1度)であり、さらに大出現が期待される。 4.SONYα7sを使用した流星の動画撮影(泉潔)  眼視観測の補助的手段としてIIやWATECを使用したビデオ観測を続けてきた。 最近はSONYα7sを使用して撮影している。感度は40万まであるが、画質の劣化が 大きいので10万で使用している。レンズは28mmF2→35mmF1.4。シャッター速度は 1/10秒。(1/30秒と比べて1/10秒は暗い恒星まで写る。これは10fpsになるのか、 1/10秒を3フレームに入れて30fpsを維持しているのか不明)。最微恒星等級は 6〜7等。4Kは使用せず、1920×1080で撮影している。 5.2月のりゅう群(関口孝志)  ソノタコネットの10年分の1月から2月のデータを解析をした。その中で、2月 のりゅう群らしきものをピックアップすると、1月27日から2月12日の期間で4 6個になった。また、軌道を見ると、木星や土星等の摂動で軌道の変化が見られてい るのか、別群(近くのGUM群)との関連性があるのか課題が残った。  次回開催予定 2016年7月3日(日) −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 第141回流星物理セミナー  開催 2015年10月4日(日)  場所 渋谷区神宮前隠田(おんでん)区民会館  参加 14名 1.ペルセウス群輻射点拡大撮影(重野好彦)  2006年〜08年にIIによる動画像観測で輻射点の拡大撮影を行った。流星が 太く写るので見栄えは良いが微細構造は分からない。今回改めて超高感度ハイビジョ ンで拡大撮影を行った。写野5.9度×3.2度と狭すぎたこともあり、十分な成果 は得られなかった。 2.IAUの確定群(流星会議発表の詳細・拡大版)(小関正広)  3年ごとに開催されるIAU総会に合わせて「確定群」が拡張されてきた。8月 15日に新版が公表された。D判定を用いて分類することになるがD値が大きくなる 原因を次のように分類した。A.高速流星で精度が不十分、B.ANTに近く散在・他群と の分離が不十分、C.構造が複雑で研究が不十分、D.出現が少なく観測が不十分。  IAU-MDCは資料倉庫と考えて利用すべきである。確定群の中でも良く知られ観測さ れているNo.1〜31を中心に検討して見たが、それでも多くの問題が存在している。 3.SonotaCoネットで精度向上努力をしている(関口孝志)(資料無し)  ソフト的、及び設定により精度向上努力を行っている。またハイビジョン動画も 扱えるようになった。まだユーザーは少ない。 4.2014年のオリオン群は平年より少なかった(内山茂男)(資料無し)  2006年ごろに流星数が増加した。06年は平年の4倍、07年は2倍程度だっ た。一方速報集計をしてみて2014年は平年よりも少ない印象だった。オリオン群 の地球に突入する流星物質は、その1年前に木星軌道の南側を通過する。ちょうどそ のとき木星本体がその近くにいた。それが流星数の減少に影響したのかも知れない。  次回開催予定 2016年2月7日(日) −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 第140回流星物理セミナー  開催 2015年7月5日(日)  場所 渋谷区神宮前隠田(おんでん)区民会館  参加 21名(大学生9名) 1.MSS資料集ホームページ 〜2015年度更新〜 (重野好彦)  ユニークアクセス数をカウントしているが、いつも100〜200PC/年と 少ない。しかし今年度は947PC/年と急増した。1年前にドメインを http://meten.net/mss → http://msswg.net に変更した効果が大きかっただろうと 考えている。 2.ANT,Apex,Toroidal −観測方法による捕捉率の違いと見え方の違い(小関正広)  観測方法によって流星速度による捕捉率に大きな違いがあり、写真観測はANT、 CCD観測はApex、電波観測はToroidalを得意とする。  Apexは地球向点方向に輻射点が集中していることは長年にわたる眼視観測でも明確 である。Toroidalは電波観測で、離心率が小さく軌道傾斜角が大きな流星体があたか も太陽を中心としたドーナツ状に分布し、円環体(トロイド)を形成していることから 命名された。電波観測は30km/sが中心であり、60km/s以上はほとんど得られない。 ANTは太陽の反対方向、地球向点の90度後ろ側に輻射点の集中がある。光学観測では 最も活発で、Apex、Toroidalの2倍程度の活動がある。 3.流星会議のお知らせ(橋本岳真)(資料なし)  8月22日(土)〜23日(日)。[幕張流星会議]で検索! 会議だけ参加3,000円(非会員)。 4.HROによる多地点観測(橋本岳真)(資料なし)  電波送信点が3点、受信点は10点(本郷,駒場,志木,東海大,千葉など)がある。 5.眼視個人係数観測をしたら内山さんに報告しよう。(資料なし) [内山茂男]で検索! → HPに報告方法が記載されています。  次回開催予定 2015年10月4日(日) −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 第139回流星物理セミナー  開催 2015年2月1日(日)  場所 渋谷区神宮前区民会館  参加 23名 1.地球の衝突断面積と隕石落下速度(海老塚昇)  2001年のしし群や2013年のペルセ群の時に輻射点が地平線から顔を出した直後に 長経路の流星が多数出現したので、地球によるレンズ効果で流星体の空間密度 (=流量:flux)が大きくなっているのではないかと思い、地球の衝突断面積と地表 における流星体の空間密度を計算した。  地心速度が遅くなると地球の引力で経路が地心方向に曲げらるため、より広い断面 積の流星が地球に飛び込んでくる。例えば地心速度12km/s(i=0の彗星等)だと衝突 断面積は約2倍、7km/s(小惑星帯メインベルト外縁)だと約4倍、4km/s(小惑星帯 メインベルト内縁)だと約9倍になる。  結果として流星体の空間密度については地表に接する軌道より、垂直な(地心を 通過する)軌道の方が高くなり、レンズ効果ではなく、多く感じるのは別の理由を 考える必要がある。 2.流星はどこから来るのか(小関正広)  流星は彗星を直接の起源としていると考えられがちだが、むしろ、そのような流星 が見られるのは一部の流星群に限られる。周期彗星から放出された流星体が地球に 突入する方向はAntapex方向が多く、空間密度がよほど大きくない限り、流星活動を 認識することは困難である。Apex方向からやってくる流星体は微小なもので非周期 彗星と共通の起源をもち、Helion sourceやANTは比較的大きな流星体によるもので 主として小惑星と共通の起源をもつと推測される。 3.MSS資料集ホームページ 〜ドメイン変更後〜(重野好彦)  MSS資料集ホームページは、2014.04.27にドメイン変更を行った http://msswg.net 。また次回流星物理セミナーのお知らせコーナーを作った。 2014.07.05〜2015.01.31のユニークアクセス数は559PCだった。従来年間175PC程度 だったので今年度は3倍増になった。 4.火球の長望遠撮影(鈴木智)  火球が出現したタイミングでカメラを向けて追尾する機材を開発しているが、今回 シグマ300mm(35mm換算で2000mm相当)で撮影に成功した。先端の太い 部分と遅れて続くツブツブの分裂部分が見られる。分裂部分が尾から10m程横に ずれていたり、2列になっていたりして興味深い。  火球出現からカメラが火球に向くまで約0.4秒、暗いものも含めると1週間に 1個程度得られる。 5.ほうおう群遠征報告(戸田雅之)  地心速度9km/s(観測速度14km/s)と聞いて、超低速群でも痕が残るか どうか調べてみたかった。2時間でほうおう群が7個得られた。3個痕が残った。 速度の遅い流星に見られる長経路の流星は少なかった。 a.流星会議の宣伝(柳信一郎)  8月22日(土)13時〜23日(日)12時、千葉市海浜幕張、アパホテル。  次回開催予定 2015年7月5日(日) −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 第138回流星物理セミナー  開催 2014年10月5日(日)  場所 渋谷区神宮前区民会館  参加 13名(台風接近のため少数精鋭) 1.IIによる流星群カタログ(改訂版省)(重野好彦)  報告書の新流星群の番号を仮番号(901〜912)からIAU登録番号 (432〜443)に改訂した。 2.隕石はいつ落ちるか −PHAによる輻射点推算と軌道が判明している20個の 隕石データ比較(小関正広)  登録されている隕石49,591個、落下時刻が月の単位まで分かっているもの360個、 時間帯まで分かっているものが116個、軌道まで判明しているもの20個である。 月別では4月と10月が多い。  最近の軌道は監視カメラや偶然撮影されたものから求められたのかと思ったが、 火球ネットワークから得られた軌道が多い。 3.輻射点の広がりと軌道の広がり(小関正広)  天文回報4月号観測指針の補足である。速度のばらつきが輻射点の広がりにどのよ うに影響するか楕円で示した。速度のばらつきが1km/sと仮定したときの輻射点 の広がりをKresakは円で示している。若い流星群は速度のばらつきが小さく輻射点も 狭い、古い流星群は速度のばらつきが大きく輻射点が広い。 4.SonotaCo Networkデータから見る地球速度による流星群の放射点への影響 (土屋智恵)  10月りゅう座(ジャコビニ)流星群などの低速群は放射点の広がりが大きく、 放射点が離れていても軌道要素は似ている。地球速度を考慮し放射点分布を示すと ほうおう群と見られる流星の集まりが確認できた。さらに幾つかの放射点の集まりも 確認できた。  次回開催予定 2015年2月1日(日) −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 第137回流星物理セミナー  開催 2014年7月6日(日)  場所 渋谷区神宮前区民会館  参加 24名 1.MSS資料集ホームページ〜2014年度更新〜(重野好彦)  MSS資料集を2014年度版に更新しました。2013.06.30〜2014.04.27間の ユニークアクセス数は176PCでした。  URLが変わりました。 http://msswg.net を参照ください。 2.太陽をかすめる彗星と流星(小関正広)  太陽観測衛星のおかげで太陽をかすめる小さな彗星が多数発見されるようになった。 Kreutz group I に69%が含まれている。10個程度の彗星の軌道を使用し、彗星 軌道の軌道軸を回転させて地球軌道面と交差するようにして、元の彗星軌道との D判定を求め、太陽黄経0〜360の間のDの変化を求めた。このときDが小さい所 で流星が見られる可能性がある。 3.ペルセウス座流星群の眼視観測報告(東京大学教育学部附属中等教育学校天文部) (信太、岩田、島、石井、阿部、多田)  2013年8月12日、13日に乗鞍(最微6.2等、雲量0)において眼視団体 係数観測を行い12日と13日の比較を行った。  意見:暗い空にしてはほとんど2等より明るい流星ばかりになっている。おそらく 等級を1〜2等明るく見積もっている可能性がある。他の観測者と比較できるように 最微や輻射点高度補正をすると良いでしょう。 4.オーストラリアでの"みずがめ座η流星群"の観測(柳信一郎)  ケアンズ近郊のアサートンにて流星観測を行った。1987年、9年の最微はズバ リ6.5等だったが、今年は年齢のせいで5.5等に落ちた。光度比は1987年に 求めた1.57を使用した。  写真観測は24mmF1.4、感度12800で天頂を撮影して見た。流星だけで なく、人工衛星が良く写った。 5.ふたご座流星群の有痕率の変化について(戸田雅之)  ごめんなさい、前回とほとんど同内容。 意見:眼視観測に比べて有痕率が一桁多いのは眼視観測では短痕が短時間過ぎて認識 できないためではないか。短痕はすべての流星に存在する。しかし人間の目には 0.1秒と短時間のため認識できない。  次回開催予定 2014年10月5日(日) −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 第136回流星物理セミナー  開催 2014年2月2日(日)  場所 渋谷区神宮前隠田区民会館  参加 25名 1.ふたご座流星群の流星痕有痕率の変化(戸田雅之)  超高感度デジカメISO:25,600、28mmF1.4、シャッタースピード 1/1.3秒で撮影し、有痕率を調べた。その結果、2010年12%、2012年 67%、2013年40%であった。眼視に比べて有痕率が非常に高い、観測年に より大きく有痕率が異なった。  意見:眼視の有痕率は数秒残ったものしか数えられない。デジカメの場合、次の コマに残ったもの、つまり1秒程度の短痕をカウントしたことになる。 2.火球パトロールの試行(泉潔)  2013年9月から、デジタル一眼+魚眼レンズによる火球パトロールを始めた。 隕石落下時の補助データ、群流星の火球増加などを調べたいと思っている。 ISO:3200、シグマ8mmF4。 3.最微等級と眼視流星数の関係(重野好彦)  明治大学天文部の眼視個人計数結果を使用して最微等級と眼視流星数の関係を求め ている。2010年のペルセウス群では最微等級の暗い観測者ほど観測流星数が多い ことが分かった。しかしその後の観測ではこの傾向が得られていない。 4.最微星5.0以下の空で眼視観測は何を目指すべきか(小関正広) 仮議事録:  光害のある観測地での流星数を補正しようとすると、大きな補正係数となる。しか も補正方法により補正係数が異なっている。また流星のような動体は、暗くても捕捉 率は高いかもしれない。古典的に考え出された補正方法は、空の暗いところで作られ た補正係数である。もう少し明るい空のための補正係数があっても良いと思う。  意見:そもそも日本で6.5等に補正するのは無理があるのではないか。 大西洋に落下した小惑星(小関正広)  2014.01.01 06:18(UT)、Mt.Lemmonの60inch反射で19等の天体として発見し、 すぐに地球に衝突することが予報された。2日後に落下した模様だ。 ケレス彗星(小関正広)  小惑星帯の中で唯一の準惑星である。Herschel宇宙望遠鏡から水蒸気放出が明らか にされた。 IAU流星群リスト最新版(小関正広)  追加削除が継続的に行われている。548FAQ〜751SMVの204群が一気に追加された。 5.都立府中工業高校における流星の電波観測2(藤由嘉昭)  2013年5月14日から2014年1月30日のエコー数、ロングエコー数を 捉えられたのでグラフを紹介する。 6.ふたご群としぶんぎ群の画像(寺久保一巳)  一眼デジカメで観測風景と流星写真を多数捉えた。ノートPCで画像を紹介した。 7.209P/Linear関連群(5月きりん座流星群(仮))(佐藤幹哉)  母天体からのダストトレイルを計算して見た。極大時刻2014.05.24、 07:00〜07:30(UT)=16:00〜16:30(JST)、輻射点123,+79、VG16.2km/s、予想ZHR10〜15。 Vaubaillon、MaslovはZHR100〜400の予報をしている。 8.低速流星群の放射点分布に対する修正効果(佐藤幹哉)  同じ軌道のばらつきを持った流星群であっても、速度の速い流星群の輻射点の拡がり は狭く見られ、速度の遅い流星群の輻射点の拡がりは広く見られる。輻射点のベクトル から地球の速度ベクトルを引くことで、輻射点の位置やまとまりが明確になる。  次回開催予定 2014年7月6日(日) −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 第135回流星物理セミナー  開催 2013年10月6日(日)  場所 渋谷区神宮前区民会館  参加 20名 1.都立府中工業高校の流星の電波観測(藤由嘉昭)  新しい高校に異動となり、5月14日から観測を再開した。アンテナは自動車用 モービルアンテナを屋上に設置して使用している。アンテナが小さく、落雷や停電 もあるため、十分満足のいく結果は得られていない。しかしペルセウス群やその他 の群らしきピークは得られている。 2.Lunar Impact Monitering Eventプロジェクト観測協力のお願い(藤由嘉昭)  NASAがLunar Atmosphere and Dust Enviroment Explorerを打ち上げた。この 人工衛星は10月から100日間、月を観測し、月の大気と塵を観測する。同時期に 地球から月面発光の観測が望まれる。 3.8月〜10月5日までの軌道計算結果(関口孝志)  ソノタコネットデータのソノタコさん自身の軌道結果は条件を厳しくしているため 小流星群用には向いていない。やや条件を甘くして同時流星の軌道計算をしてみた。 その結果、小流星群の活動が多く見られる。みずがめδ北群は毎年活動が少ない。 ぎょしゃ群はαβδと3つに分かれている。はくちょう群の長い分布が見られる。 エリダヌス群は拡がっている。昼間のろくぶんぎ群が2個同時になった。 4.SonotaCo Netのデータから調べたおうし座流星群(内山茂男)  日毎の全天輻射点をプロットしてみるだけでも各群輻射点の発生・消滅がたいへん 面白い。おうし群に着目し、北群・南群それぞれの増加・減少を見てみるとピーク 前後の増減が良く分かり、極大日も求めやすくなった。詳細な輻射点移動、輻射点の 拡がりなどもプロットして調べてみた。 5.東海大学天文宇宙同好会の流星観測再開について(野島康宗)  1967年発足以来の沿革、活動の紹介。会員数は近年100名程度を誇っている。 2004年に八ヶ岳観測遠征の帰りに死亡交通事故を起こし、現役生の自動車使用が 禁止されており、OBが協力している。観測活動はほとんど停止状態が続いていたが、 最近復活傾向にあり、流星についても2012年から主要群について、10名程度で 眼視観測を続けている。 6.最微等級と眼視流星数の関係(重野好彦)  明治大学天文部では2010年からエリア法による最微等級目測を行っている。 2010年のペル観では最微等級の暗い観測者ほど眼視流星数が多いことが示された。 一方、2013年のペル観ではこの傾向が無くなってしまった。眼視流星数が周りの 観測者に影響されたことが原因と思われる。 7.流星群の見え方:IIと電波観測(小関正広)  1)II観測は写真・ビデオと電波観測の間を埋める重要なものである。---2点観測 を単独で実行され、三千を越える軌道を得られた重野氏の努力は貴重なものである。  2)重野氏が指摘した12群のうち、ASXはJenniskensがその後指摘したNASと同一と 判定できる。---ETPについても写真観測との同定が考えられ、今後の検討が必要で ある。  3)流星観測では、眼視、写真、CCD、電波、IIはそれぞれ異なる特性を持つ ことに留意する必要がある。 8.今年(2013年)のみずがめ座η群のダストトレイル(佐藤幹哉)  天文学会と同内容です。西暦374年以降の太陽接近時に放出されたダストは地球 に接近しない。−910年、−1197年のダストはかなり地球に接近することが 分かった。2013年5月6日に通過し、例年の2倍〜3倍の出現があった。今後の 活発化は残念ながら当分無さそうだ。  次回開催予定 2014年2月2日(日) −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 第134回流星物理セミナー  開催 2013年7月7日(日)  場所 渋谷区神宮前区民会館  参加 17名  久しぶりに長沢工先生が参加されました。長年の夢だったストーンヘンジを見学 されたとのことでした。かなり体力的に弱くなられたご様子でした。  理科大天文研の流星班と言えば、大天連の先生的な存在でしたし、軌道計算の 先生でもありました。その伝統ある流星班が、やることが無いと言って班を解散 してしまったと言う話は、さすが理科大、止めるときも先を行っていると素直に 感心してしまいました。 1.MSS資料集ホームページ〜2013年度更新〜(重野好彦)  MSS資料集を2013年度版に更新しました。2012.06.28〜2013.03.27間の ユニークアクセス数は174PCでした。 http://meten.net/mss 参照ください。 2.独自ドメインを取ってホームページを安く立ち上げよう(重野好彦)  今まで使っていたWebサーバ業者が廃業してしまったため、他を探し、ドメインは VALUE-DOMAIN.com社で950円/年、WebサーバはSAKURA Internet社で1,500円/年に 別けることにより、安価に立ち上げることができた。 3.都立総合工科高校における流星の電波観測(藤由嘉昭)  勤務先の高校が変ったので観測機材を片付けた。今までの観測結果、 2008年7月1日〜2013年3月31日までのエコー数などをまとめた。一般的に、 福井高専に向けたアンテナより、天頂に向けたアンテナの方が流星数が多い。 4.流星群の定義(小関正広)  Denning:流星経路の逆延長が一点に収束するところ。Olivier:眼視観測による輻射点 決定の原則を提唱。Hoffmeister:流星経路の逆延長した交点の密度で判定する。 McCrosky&Posen:輻射点を星図に記入して判定。広がり5〜10度。Southworth&Hawkins: 軌道の類似度D判定を提唱。Lindblad:多くの流星によりD判定の改良を図る。しかし 観測精度の壁があった。小関:写真観測から平均軌道によるD<0.15を判定基準として いる。Jenniskens:同定基準は示されていない。  「流星群」の見え方は観測年代、観測方法によって変化する。資料に書いてある・ なしにこだわらず、観測はきちんと記録に残すことが基礎だ。 5.雑談 〜日流研、流星会議への参加が何故少なくなったか〜  学生には学生の集まりができている。以前はマル東、MSSで案内状を配ったもの だ。幹事が努力しなくなった。レベルの高い話を楽しめる人がいなくなった。  次回開催予定 2013年10月6日(日) −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 第133回流星物理セミナー  開催 2013年2月3日(日)  場所 渋谷区神宮前区民会館  参加 12名 1.流星観測ソフトのWindows7(64ビットCPU)対応(重野好彦)  従来プログラムを16ビットで作成していたが、32ビットにすることにより、 64ビットOSの32ビットエミュレーションで動作するようにした。  1)赤経;赤緯、軌道要素の分点変更、2)流星群軌道の類似性をD;D'判定で調べる、 3)輻射点の方位角;仰ぎ角計算、同時観測の交差角予想、4)輻射点と速度から軌道、 軌道から輻射点と速度、5)年月日時分秒→太陽黄経、太陽黄経→年月日時分秒。  http://meten.net/mss → [観測報告と流星用プログラム]からダウンロード下さい。 2.ZCSとペルセウス群の初期活動(小関正広)  ZCS(ζ-Cassiopeiids)カシオペア群がある。IMOではペルセウス群は7月下旬 に始るとしているが、日本においては7月はペルセウス群ではないと思われている。 λ-λs=280;β=+40を中心に輻射点を描いてみると、ほぼ中心に輻射点が集まっている ことが分かる。λs=118まで輻射点の集中があり、一旦薄らいで、λs=125ぐらいから 活動が始る。これはペルセウス群だろう。まだペルセウス群の初期活動は結論が出て いない。  2005年に日本で観測され、話題となった<ペルセウス群の初期活動がヨーロッパの 観測に基づいてZCSとしてIAUに登録された。国内で話題にするだけでなく、積極的に 海外に発表すべきだ 3.1月20日の2時42分04秒の爆発低速分裂火球について(関口孝志) (不参加未発表)  4台のカメラで同時が成立し、軌道計算されている。また京都大学地震防災研究部 門が地震計のデータを使用して火球の飛行経路を推定している。両者の結果はよく一 致している。また多くの人が音を聞いている。電波観測でもエコーが観測されている。 その他、ライブカメラや車載カメラにより撮影されていた。残念ながら隕石としては 海上のため捜索不可能であった。  次回開催予定 2013年7月7日(日) −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 第132回流星物理セミナー  開催 2012年10月7日(日)  場所 渋谷区神宮前区民会館  参加 25名(半数が中高大学生) 1.同時流星ビデオ画像(動画像)を希望者に配付します(重野好彦)  1995年〜2007年にII+ビデオで同時観測した6等より明るい流星を切り 出した579流星ファイルを作った。DVD−Rで4枚になり有料で配付する。 詳しくは http://meten.net/meteor 2.2012年9月のペルセウス群の結果(関口孝志)  9月10日1〜2時台(JST)の2時間で推定電波ZHR(杉本式):24程度となって いる。SPE群と推定される。電波で顕著なピークが見られた。また、TVの 同時流星の結果からは、2時から3時台にピーク。光度分布から、今年は従来とは違う 暗い流星物質のトレイルと遭遇したようだ。 3.HROによる2012年ペルセウス座流星群の極大の推定(泉潔)  天候により眼視観測ができなかったときのために電波観測を試行してみた。 受信電波:53.75MHz(福井高専)、受信装置:HRO MRX50(アイテック電子)、解析ソフト :HROFFT(大川一彦氏)、アンテナ50MHz用2素子(巨大なもの)、PC:WinXP(Win7では 動作しない)。  従来のピーク太陽黄経140.00度に一致した。しかしやはり眼視観測に勝るものでは ないと感じた。 4.流星の電波観測(2012年1〜9月のデータ)(都立総合工科高校:稲本陽介 小金澤駿也 小針龍太郎 中元翔 林哲志 澤村一輝 藤田普玄 藤由嘉昭先生)  福井高専に向けたアンテナと天頂に向けたアンテナがある。しぶんぎ、みずがめ、 ペルセウス時にはロングエコーが多い。 5.超高感度デジタル一眼レフによる流星痕観測(戸田雅之 山本真行 前田幸治 重野好彦 比嘉義裕 渡部潤一)  2009しぶんぎ、オリオン、2010ふたごで撮影できた230個の群流星画像から112個の 流星痕が得られた。流星痕の出現域、最大光輝域、色などを調べた。  意見:デジカメのCCDは四角形に赤+緑+緑+青になっており、緑が2倍の感度 を持つ。低照度対象に関しては色の分析に注意が必要だ。  意見:使用したレンズが書いてない。 6.10月りゅう座流星群(ジャコビニ群)の2012年の予報(佐藤幹哉)  今年(2012年)10月08.69〜08.73日17時(UT)=09日02時(JST)ごろに1959;1966年放出 のダストトレイルと遭遇する。類似した1999年の状況と比較した。fM値を比較する と2012年はかなり低く、1999年のZHR:30程度と比べると、2012年はZHR:10以下か?  おまけ:ISON彗星(C/2012S1)の一回帰ダストトレイルを調べてみた。約1400年の 長周期を仮定して、一番近いときでも約0.008AUまでだった。出るとしたら1月15〜 16日ごろで、輻射点はしし座。  次回開催予定 2013年2月3日(日) −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 第131回流星物理セミナー  開催 2012年7月1日(日)  場所 渋谷区神宮前区民会館  参加 18名 1.MSS資料集ホームページ 〜2012年度更新〜 (重野好彦)  ホームページを2012年度版に更新した。データ量が約890MBになった。 希望者にDVDを200円で配布した。  http://meten.net/mss ここ1年間のユニークアクセス数は88PCだった。 手間の割にはアクセス数が少ないのが残念。 2.2012年6月27日までの電波観測結果(藤由嘉昭)  今年6月は理由は分からないがエコー数が多いようだ。眼視でも泉さんが多かっ たと述べており、年により増減があるのかも知れない。  2011年8月11日20:37:29に古川さんがISSから撮影された流星を調べて みたところ継続時間8〜10秒のエコーとして観測されていた。 3.重野DVDで遊ぶ(小関正広)  重野氏が公開されたビデオ流星DVDから各コマを合成してみると、ししとペルセ ウスはもっと高高度からごく薄く発光が始っているように見える。  http://meten.net/meteor を参照いただくと、今まで撮影された6等級以上の 流星動画像をDVDで公開している。自由に研究に使用いただきたい。 4.2月りゅう座η流星群のダスト・トレイル解析(佐藤幹哉)  2月4.5日(UT)輻射点α239.9 δ+62.5 V35.6。母天体の公転周期約900年、 近日点通過1190年と仮定し、1回帰のダスト・トレイルの分布を計算した。この 先2016年、2023年に接近する。  次回開催予定 2012年10月7日(日) −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 第130回流星物理セミナー  開催 2012年2月5日(日)  場所 渋谷区神宮前区民会館  参加 17名 1.UFOCaptureによる2011年の流星観測結果と考察(関口孝志)  WatecNeptune100+6mmF0.8(3台)、12mm(1台)で運用している。2011年度は 23;503個得られた。SonotacoNetの単点観測では159;668個、その内同時が27;335個、 自分とINOUE氏の同時が2;121個だった。関東、関西、中部地方はほぼ網羅している。 今回比較的精度の高いものだけを使用して分析を行った。  L−LS図を見ると220度付近は流星数が少ない、黄経210度、黄緯10度 付近に高速群が見られる。2011.12.22/23こぐま群はSonotacoNet同時112個あり、 トレイル理論とビデオ結果、電波結果が良く一致した。また主要群を取り除いて見る と幾つかの集中(未知群)が散見される。 2.眼視、写真(CCD)、電波(II)で見えるもの(小関正広)  2011年の明大天文部のふたご群の観測結果を使用してKresakovaの視認率を加味 し、等級別の流星数を図示すると良く直線に乗ってくる。ふたご群の光度比r:2.66、 散在r:3.71になった。一般に群流星r:約2.5、散在r:約3.5と言われてお り、よく一致する。団体観測には、個人観測に比べて光度比を求めることが容易であ るという優位性がある。  暗い流星が得られる電波(II)で観測すると当然眼視、CCDとは見える対象が異 なってくる。また暗い流星は観測年により流星数が大きく異なることが分かっている。 CCDや電波の観測結果を混在させたIAUの”確定群”リストは怪しく、混乱を招 くもとである。 3.IIビデオ同時観測により検出された流星群輻射点カタログ(英語版) (重野好彦 山本真行)  2年半前から原稿を作成し、WGNへ投稿した。IIによる同時観測で得られた 3,770流星に関して、D判定及びD'判定を利用して、IAU流星群リストと 照合を行った。その結果22既知群と12未知群を検出した。  12未知群に関してはあっさりとIAUリストに登録され、IAU432番〜 443番となった。IAUリストは2008年に295群で始まり、どんどん増えて 400群を超えてしまった。この流星群リストが今後どのような意味を持つのか。 4.論文紹介(Discovery of the Feb Eta Draconids ... (P.Jenniskens&P.S.Gural) WGN 39:4(2011))(内山茂男)  Watec-902H2+12mmF1.2(視野20d×30d)を3観測地点に20台ずつ設置。2011.02.04 に80流星の中の5〜6流星がほぼ1点に集中。輻射点(240;+62)、対地速度35.6km/s 付近。順行でほぼ放物線軌道。  長周期彗星の1公転トレイルだろう。2公転するとかなり拡散する。木星と土星の 摂動を考えると60年に1〜2回軌道が地球に近づくトレイルがあるだろう。また この母彗星は地球に衝突する可能性がある。ただ計算すると確率は非常に低い。 5.ジャコビニ群(10月りゅう座流星群)の極大に対する考察(言い訳)(佐藤幹哉) 星ナビ2012.1及び川崎市青少年科学館紀要(2011)  観測された極大時刻が理論値よりも約25分早まったので理由を調べてみた。当初 は使用した軌道要素の違いが問題と思っていた。結論として母彗星の軌道要素は、 元期を近日点通過時の軌道要素に変換しなければならないが、この処理が正しくない ことが判明した。  次回開催予定 2012年7月1日(日) −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 第129回流星物理セミナー  開催 2011年10月2日(日)  場所 渋谷区神宮前区民会館  参加 20名 1.MSS資料集ホームページ 〜2011年度更新〜 (重野好彦)  ホームページを2011年度版に更新した。データ量が約860MBになった。 希望者にDVDを200円で配布した。  http://meten.net/mss ここ1年間のユニークアクセス数は164PCだった。 1年に1度のこととは言え、資料集の作成には手間がかかる。手間の割にはユニーク アクセス数164PCと少ないのが残念。 2.流星群のプロファイリング−−−しし群を例として(小関正広)  流星群のプロファイルをここではZHRで表される出現推移のグラフという意味で 使う。流星群内部の流星体分布に簡単な仮定を設定することにより、流星群のプロフ ァイルを推定できる。近日点方向を軌道面内で回転させてプロファイルを求めた方が 良いのは、しし群のように近日点方向と軌道交点が地球軌道に極めて接近している場 合のみである。一般的は「近日点方向固定、軌道半長径一定」という仮定だけで流星 群のプロファイルを推定できる。流星群のプロファイル(ZHR)を求める基本的な 観測方法は眼視観測である。 3.流星の電波観測 流星群とロングエコーの関係 (都立総合工科高校 宇田川雄貴 鈴木淳史 千田元気)  2011年の通常エコーとロングエコー(20秒以上)の変化を調べた。年変化と、 しぶんぎ、みずがめη、ペルセウス、ふたごの変化をグラフにした。  この報告は第3回坊ちゃん科学賞優良賞を獲得しました。 4.10月りゅう座流星群(ジャコビニ群)2011年の日本での観測条件と出現状況予測 (内山茂男)  1933年、1946年に大出現、HR1万とも言われている。1985年は夕方 の短時間にZHR800程度、1998年はZHR800程度だった。  2011年は1900年トレイルがJST5時ごろにZHR500程度と予報され ている。しかし東京5時の輻射点高度は約2度、天頂引力を考慮すると輻射点高度は 約8度になる。東京日出5:42。  次回開催予定 2012年2月5日(日) −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 第128回流星物理セミナー  開催 2011年7月3日(日)  場所 渋谷区神宮前区民会館  参加 15名 1.IIビデオ同時観測により検出された流星群輻射点カタログ(最終版) (重野好彦 山本真行)  2年前から原稿を作成してきたが、ようやく最終段階となった。IIによる同時観 測で得られた3,770流星に関して、D判定及びD'判定を利用して、IAU流星群 リストと照合を行った。その結果22既知群と12未知群を検出した。星図上にプロッ トすることで読者に理解しやすくした。「観測された輻射点とIAUリストの輻射点 を表す図」と「検出された輻射点を表す図」の2種類を比較できるようにした。機材 の説明、D判定の解説、既知群・未知群の検出方法、誤差楕円の解説などを付加した。 2.木星での流星 (田部一志 三品利之 米山誠一 山崎明宏 立川正之 青木和夫 市丸雅行 渡部潤一)  2010.08.20.18:22:12UTに、木星面での位置CM2=159度、地理緯度+21.1度に閃光が 見られた。日本でアマチュア3名が撮影に成功した。継続時間1.3秒、最大光度6.2± 0.1等、温度4300-4400K、サイズ4.2m以下。熊本の立川さんが発見者。木星に天体が 衝突する現象は以下が知られている。流星観測者の進出に期待したい。 日時 観測者 絶対等級(100km) 直径 1979.03.05 Voyager1 -12.5 0.2m 1994.07.19 OAO - <1000m SL-9 2009.07.23 - - 200m-500m 2010.06.05 Go & Wesley -25.2 8-13m 2010.08.20 立川;青木;市丸 -22.4 4.2m 3.学生との懇談会「何故、流星仲間は増えないのか?」(柳信一郎) ・帝京大学、東海大学、日本大学理工、明治大学の天文部員が参加した。 ・日流研を知っているか? 宣伝活動を見たことは無い。雑誌等で名前が出てくると  ネットで検索して知る程度。 ・月惑星研究会では最近40人程度と多くなった。これは大学天文部に有力者がいる  と仲間を連れてきてくれる。これも数年経つと何人残るか分からない。 ・大学で仲間に話しても反応が少ない。電波観測をやろうとして機材を借りてきてみ  たが、受身の対応が多い。 ・大学内で天文部員は何を求めているのか。惑星を見てみたい、天体写真を撮りたい  人が多い。 ・以前、観測方法の説明会やまとめ方の講習会(マル東オリエンテーション)があっ  たが。ひところは盛り上がったがマンネリとなって人が集まらなくなってしまった。 ・流星のことで分からないことを気軽に聞ける人はいるか? →聞かないままの人が  ほとんど。 ・惑星観測の場合、機材、資金、経歴が学生の障壁になっている。 ・これからも眼視流星観測を続けようと思っているか。→それなりにある。ビデオで  撮ってみたものよりも、眼視で見たほうが美しいから。 ・帝京大ではフィルムカメラで2点観測、軌道計算を行っている。部外への発表は  行っていない。 ・ワテックとUFOキャプチャーの登場で眼視観測は意味があるのか。実はまだ  ワテックと眼視観測は比較研究がなされていない。 ・今や流星観測はハードルが高い。写真(ビデオ)を撮るにも機材が必要だし、見て  楽しいのがとても重要。 次回開催予定 2011年10月2日(日) −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 第127回流星物理セミナー  開催 2011年2月6日(日)  場所 渋谷区神宮前区民会館  参加 21名 1.明大天文部の眼視グループ観測から分かること(小関正広)  明大天文部の2010年のペルセウス群、ふたご群の計数観測結果を使用した。 クレサコワの視認率(見落とし率の逆)を使って観測者ごとの等級−流星数のグラフ を作ってみた。すると観測者ごとのばらつきがあり、(a)最微等級の見積りに誤差が ある、(b)流星の光度を暗く見積もっている、ことが分かった。また、(c)−3等以上 明るい流星を暗く見積もっている、(d)暗いペルセウス群の場合、群を散在にしてし まっている、ことも分かった。加えて、光度比の求め方についても解説した。  最微等級と観測限界最微等級の差が1等級以上ない観測者は、当初公開を削除され たが、本研究では十分利用可能な事がわかった。 2.流星の電波観測〜2010年の観測報告とふたご、しぶんぎ群のデータ、他〜 (藤由嘉昭)  2010年の1日毎のカウント数、月ごとのロングエコー数などのグラフを作成し てみた。またふたご群、しぶんぎ群のカウント数のグラフを作成した。福井の電波を 受けているのだが、どれも福井向きアンテナより、天頂向きアンテナのシグナルが大 きい。他には天頂向きの観測をしている人はいないので比較できない。 3.IIビデオ同時観測により検出された流星群輻射点カタログ  (MSS127用に一部のみ紹介)(重野好彦)  1年半前から原稿を作成してきたが、ようやく最終段階となった。IIによる同時 観測で得られた3,770流星に関して、D判定及びD'判定を利用して、IAU流星 群リストと照合を行った。その結果22既知群と12未知群を検出した。星図上にプ ロットすることで読者に理解しやすくした。以前の輻射点星図はカラーで内容を識別 するように作成したが、今回は「観測された輻射点とIAUリストの輻射点を表す図」 と「検出された輻射点を表す図」の2種類を比較することで理解しやすくした。 4.The Dynamics of Low-Periherion(近日点距離) Meteorid Streams (Paul A. Wiegert)(Earth Moon Planet 2008 102:15-26)論文紹介(内山茂男)  Canadian Meteor Orbit Radar(CMOR)の観測結果を分析した。近日点距離の小さい 流星群が多く見つかったが、母天体の候補となりうる彗星はほとんどない。そこで軌 道を遡ってシミュレーションしてみた。例えばこうまβ群で、半径0.1mmの流星 物質を5万年ほど遡ると、軌道長半径が約4AUになり、木星付近に達する。  トロイダルソースの特徴:a)軌道長半径aは1AUをピーク、b)軌道傾斜角iは 60度付近が多い、c)離心率eは小さく円軌道に近い。これのソースとしてありえる か検討したが、まだ研究が必要である。  小さい近日点距離と軌道長半径で軌道傾斜角の大きな多くの小流星群は、もっと 大きな軌道長半径の彗星から放出された小さな流星物質がPR効果と古在共鳴による 進化によって生じたようだ。 5.2011年の10月りゅう座流星群(ジャコビニ群)(佐藤幹哉)  1887年、1900年放出のダストトレイルが、0.001AU以内まで地球軌道に接近し、 活発な出現が期待される。期待される極大時刻は以下のとおり。  1887年:2011/10/09 02:05JST 0.00071AU 予想ZHR: 74  1900年:2011/10/09 05:36JST 0.00097AU 予想ZHR:519 残念ながら輻射点高度がかなり低く、月明かりもある。  過去のダストトレイルの状況を調べてみた。1933年:ZHR10;000、1946年: ZHR12;000、1998年:ZHR600。またジャコビニ彗星の回帰時の活動状況(彗星光度)に より、ダストの放出量が異なることにより、流星数に大きく影響するようだ。 6.簡易放射線測定器で地表のミューオン(二次宇宙線)を測る(松沢孝男)  10km〜100km上空の太陽及び太陽系外起源の宇宙線の最期を見る。ミューオンは 電子の約200倍の質量を持つ。安価なGM管を使って検出できる。GM管を2本 並べるとミューオンは両方を貫通するので同時に検出されるとミューオンだと分かる。  航空機など高高度では、ミューオンによる放射線被害に注目すべきである。 次回開催予定 2011年7月3日(日) −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−  今回は高校生2名、大学生8名が参加してくれたので、平均年齢が大きく下がり ました。 第126回流星物理セミナー  開催 2010年10月10日(日)  場所 渋谷区神宮前区民会館  参加 27名 1.最微等級と眼視流星数の関係(重野好彦)  明治大学天文部の2010年8月9/10日の眼視観測で、エリア法による最微等 級目測を全員(約50名)で行った。最微等級を0.1等まで正しく目測することによ り、観測者ごとの眼視流星数の違いを表すことが出来るようになった。ペルセウス群、 散在ともに最微等級が暗い人ほど眼視流星数が増加することが確かめられた。  意見:自分の集計では最微が1等暗くなると、眼視流星数が約2倍に増加する。 この観測では1.5倍程度なので低すぎるのではないか。→最微目測時には頑張って 暗い目測をするが、観測時には眠くなって流星数が増加しないことが原因と思われる。 2.2010年6月のデータによる昼間流星群の検出   (都立総合工科高校 藤由嘉昭 矢島 塚本)  6月1日〜30日の観測結果から偏差値を求めて増減を調べた。ヘルクレスτ、 おひつじ昼間、ペルセウスζ、わし南、わし北、おうしλ昼間、おうしβ、からす、 ペルセウスε、うしかいなどが検出されたとも思われる結果が得られた。  意見:そんなにたくさんの群が本当に検出できたのか? 3.2010年8月ペルセウス流星群の報告と電波観測近況   (都立総合工科高校 藤由嘉昭 矢島 塚本)  7月〜9月の結果をまとめてみた。8月上旬、8月中旬に偏差値80を越えるピーク が分かる。偏差値は1月〜9月の全データから平均と分散を求めた。  意見:偏差値が80を超えると言うことは大変なことなので、やはり偏差値では なく、普通にカウント数で表現した方が良いのではないか。 4.流星塵についての研究U   (前橋東高校理科同好会 泉潔 高山瑞佳 木村裕也 岡田優也)  前橋東高校では2008年4月から空中採取法と雨水ろ過法で流星塵の観測を行っ た。過去の研究では秋に多いと言われているが、我々の観測でも秋に増加が見られた。 流星塵はほとんど散在流星起源なので、秋に散在流星が増加することと一致する。  空中採取法はスライドガラスにワセリンを塗って24時間放置する方法。1枚のみ で何個付着したかカウントしている。 5.かみのけ群?(小関正広)  1月初旬〜中旬にかけて活動が知られている。こじし群のL-Ls;B:243;22を年間の 赤経、赤緯に置き換えると1月かみのけ、2月おとめ、3月へび、4月へびつかい、 5月わし、6月こうま、7月ペガスス、8月アンドロメダ、9月ペルセウス、10月 ぎょしゃ、11月やまねこ、12月こじし座に相当する。全てに相当する群がある訳 ではないが、これらをそれぞれ別群で表すことが正しいのかどうか。  電波観測で得られたからと言って、眼視で見られるものではない。CCD観測が眼 視に近い。この件に関しても、群をたくさん作って意味があるのかどうか。 6.2010年ふたご座流星群の観測条件(内山茂男)  ふたご群は等級によってピークが異なる。4等の流星を見ると日本時間13/14・ 14/15がほぼ同数。−4等の流星を見ると日本時間14/15の明け方ぐらいがピークと なる。これはポインティング・ロバートソン効果で小さな流星物質が小さな軌道と なり、地球と早く軌道が交差するため。  意見:IIを使用すると6等や8等のピークを求めることができるので、比較して はどうか。眼視観測より2日程度ピークが早い感じがする。 7.2010年オリオン座流星群(佐藤幹哉)  2006年に活発化したオリオン群は、約3千年前にハレー彗星から放出され、 木星と1:6の平均運動共鳴にあるダストが地球軌道に接近するためであることが分 かった。この接近は2006年〜2010年であり、今年はラストチャンスとなる。  3千年より以前は、ハレー彗星の軌道が分かっていないので、ダストトレイル計算 できない。 8.流星の短痕を測る(戸田雅之 山本真行 重野好彦)  イメージインテンシファイア付ビデオカメラの2点観測成果から短痕の発達・減衰 を調べた。2001年11月18日のしし群大出現の観測から、しし群18個、散在 8個の短痕を測定した。短痕は120kmから96kmの範囲で見られた。継続時間 が長い(最後まで発光が残っている)のは110km付近だった。  意見:短痕はOI(557.7nm)の発光と考えられ、平均継続時間は0.7秒程度と長 い。より低空になると空気分子との衝突頻度が高まり、発光が継続できない。よって 110km付近の発光が最後まで残るのだろう。 次回開催予定 2011年2月6日(日) −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 第125回流星物理セミナー  開催 2010年7月11日(日)  場所 渋谷区神宮前区民会館  参加 25名(一般14名、学生11名) 1.MSS資料集ホームページ 〜2010年度更新〜 (重野好彦)  ホームページを2010年度版に更新した。ここ1年間のユニークアクセス数は 119PCだった。 http://meten.net/mss  データ量が約800MBになった。希望者にDVDを200円で配布した。 2.ペルセウス座流星群眼視観測ガイド(内山茂男)  1)各観測方法の長所/2)ペルセウス座流星群を観測しよう/3)ペルセ群をいつ観測 する/4)眼視観測方法/5)眼視観測をするときに記録すること/6)観測中、流星群が 出現したときに記録すること/7)記録項目の補足説明/8)観測報告例/9)詳しくは。 3.流星観測用星図(重野好彦)  エリア法により最微等級を0.1等の精度で求めるための星図を配布して説明した。 4.IIビデオ同時流星により検出された流星輻射点カタログ(重野好彦)  我々の同時流星観測から得られた輻射点とIAU流星群リスト(295群)との 比較を行った。流星群と観測された輻射点を星図上にプロットし説明した。流星群の 判定にはD判定、D’判定を使用している。 5.昼間火球画像の紹介(横田憲治)(資料無し)  UFOキャプチャーにより流星観測を続けている。夜の観測でスイッチを切り忘れ たところ、昼間に流星らしき画像が得られた。昼間なのでレンズが自動的に絞られて おり、物体(光源)は小さく見えるが、夜間だったらかなり明るかっただろう。 6.電波観測(藤由嘉昭)(資料無し)  HROFFTモニター画像の紹介。ロングエコーによるモニター画像を紹介した。 次回開催予定 2010年10月3日(日) −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 第124回流星物理セミナー  開催 2010年2月7日(日)  場所 渋谷区神宮前区民会館  参加 20名 1.超高感度ISO12800デジタル一眼レフカメラによる永続流星痕の観測  −2009年度の成果−(比嘉義裕)  −4等より明るい流星では“見える流星痕”が残りやすいが、観測例は非常に少な い。一方、1等程度の流星でも、それなりに流星痕が存在することが分かってきた。 これら“見えない流星痕(invisible train)”は、流星が出現したらカメラを向け シャッターを切ることで撮影できる。流星出現後8秒程度で導入できる。  現在、Canon KissDX3 50mmF1.8 ISO12800 2〜3秒露出で観測している。流星パト ロール用には10-22mmF3.5〜4.5(10mmF3.5で撮影)ISO1600 15秒露出。どちらも、 RAW画像、ノイズキャンセルOFF、ホワイトバランス太陽光。 2.デジカメ感度と画質(重野好彦)  D3とX3の感度100〜12800(25600)の画質を調べた。感度200、 400でも徐々に画質が落ちる。感度1600を超えると荒れが目立つ。感度128 00を超えると色まで変わる。高感度が必要な場合でも感度6400で撮影し、必要 に応じてPhotoshopなどで高感度化する方法もある。感度12800以上で撮影した 画像を高画質に戻すことはできない。 3.流星痕自動撮影装置について(鈴木智)  Watec 100N + 魚眼レンズ ビデオカメラで全天を撮像し、流星を検出すると一眼 デジカメを流星方向に向けて撮影する自動撮影装置を製作した。デジカメとしては Canon X2 85mmF1.2 を使用。流星出現後、1秒後に撮影が開始できる。  さらに観測場所固定型の装置を製作した。電源の心配が無いので大型化させ、カメ ラも Canon 5D mk2 200mmF1.8 を使用。2009.10.28〜11.20 +12.12の期間で80個の 流星痕を撮影した。その内SonotaCo Netで対地速度等が求まったものが65個ある。  余談:昨年公開された自衛隊一番艦ヘリ用航空母艦(ひゅうが)に搭載されている 全自動機関砲システムとそっくりだ。 4.D3を使用したオリオン群流星痕の画像紹介(戸田雅之)(資料なし)  昨年のオリオン群でD3+28mmレンズを使用し、連続1秒露出で撮影していた ところ、−4等の流星が出現して流星痕が残った。 5.観測方法による流星の見え方:IIとCCD(小関正広)  IIとCCDの特性を比較した。観測方法によらず消滅点高度は同じ。眼視、写真、 CCDは観測等級が近い。IIは電波観測に近い。 6.2009年しし座流星群短時間集計結果(内山茂男)(資料なし)  ライチネン予報を見ると7時JSTがピークになるが、2時〜4時JSTに流星数 が増加しない(グラフではなだらかな部分がある)予報となっている。日本の眼視観 測結果を見ると、10分毎の集計結果では、このなだらか部分とも取れる結果が得ら れ、たいへん興味深い。 7.散在流星の年周変化についてU(泉潔)  散在流星の年周変化を調べた。北半球では年前半に少なく、年後半に多い。これは 地球向点の高度に関係し、南半球では逆のパターンになると言われてきた。しかし観 測結果から言うと南半球ではこの年周変化が見られない。年後半に散在流星が多いの は、年後半にダストの分布が多いからであろう。周期彗星の交点分布も年後半が多い。 望遠鏡や電波では南半球でも年後半に流星数が多いという研究もある。眼視では1年 中、ほぼフラットな出現分布のようだ。 8.同時流星観測報告オリオン群(重野好彦)  1993、6、7、2009年のオリオン群の輻射点星図を比較した。輻射点の誤 差楕円星図を示した。過去3回の誤差は0.7〜1.0度と大きかったが、2009 年は0.28度と小さくなり誤差楕円が様子をよく表している。 9.流星観測用星図の配布(重野好彦)  日流研が公表している流星観測用星図(エリア法星図)の原図は39ページあるが、 通常使用する12ページのみにした。星図中に「エリア法の恒星数」「主要な輻射点」 「輻射点高度」を示した。眼視観測初心者向けになっており、この1冊でほとんどの 眼視観測に対応できる。  意見:最微等級エリアを拡大し、主な恒星の等級を図示して欲しい。 10.2009年10月〜2010年01月の電波観測結果(藤由嘉昭)  オリオン群、ふたご群、しぶんぎ群をおおよそ検出できた。眼視と比べて数時間ず れる感じがする。 11.ペルー・クレーター奇憚(大塚勝仁)(資料のみ配布未発表)  2007年9月15日11:45(現地時)にチチカカ湖付近に隕石と思われる物体 が落下して、直径数十mのクレーターが形成された。 懇談会  流星物理セミナー資料集のホームページを運用しているがアクセス数が非常に少な い。8ヶ月間で約80件(ユニークアクセス数)であった。資料集の作成には非常に 手間がかかり、このように利用者が少ないのであれば、運用を止めたいくらいだ。  http://meten.net/mss → googleで検索するとトップに出てくるが。 意見:  ・資料集の電子化のおかげで、紙の資料を廃棄することができた。  ・流星という非常にマイナー話題なので、こんなものではないか。  ・宣伝方法をもっと考えてはどうか。雑誌、天文回報、ネット広告。  ・手間をかけない運用方法を考えてはどうか。1原稿1ファイルにして、ファイル   名を工夫する。→ネットでは漢字ファイル名は使えない。 次回開催予定 2010年7月4日(日) −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 第123回流星物理セミナー  開催 2009年10月4日(日)  場所 渋谷区神宮前区民会館  参加 23名 1.流星電波観測による主要流星群経年変化(小川宏)  電波観測を使って主要群の経年変化を調べた。流星電波観測国際プロジェクトの結 果として掲載している。データはAMRO-NET、RMOBからいただいた。しぶんぎ群、みず がめδ群、ペルセウス群、オリオン群、しし群、ふたご群のActivity Level図の紹介 と各群の考察を行った。 2.流星の電波観測 2009年7月〜9月の観測データ(藤由嘉昭)  アンテナ:天頂、福井高専向きに2台。PC:それぞれ用に2台を用意した。時刻 合わせもUSB用GPS受信機(GT-730)と同期ソフト「さとくん」を使うようにした。  なぜ縦軸にカウント数ではなく偏差値を使っているのか? 年初からの平均と標準 偏差から偏差値を使っている。  貴重な情報たいへんありがとうございました。  ・受信機はUSB用GPS受信機(GT-730)。バンドルソフトで位置や時刻を表示できます。   http://www.gpsdgps.com/product/pr_canmore_gt_730fls.htm  ・PCシステム時計を同期させるソフト「さとくん」。   http://uchukan.satsumasendai.jp/data/occult/gpsradio/satk.html 3.オリオン座流星群:最近の出現状況と2009年の観測条件(内山茂男)  従来からZHR20程度だったが、2007はZHR80、2008はZHR60、2007はZHR40だった。 2000年以上前のダストトレイルで71年周期のダストが当たったらしい。06/07年の ピークから推定すると2009年は10月21/22日(水/木)が大注目だ! >第116回流星物理セミナー > 開催 2007年7月1日(日) >5.2006年オリオン群突発出現の起因ダストトレイルの背景(佐藤幹哉) >ハレー彗星の公転周期は、かつて現在よりも短い時期があり、昇交点が地球軌道付近 >にあった。およそ3000年前(−1265〜−762年)に、一部のダストが、木星 >との1:6の共鳴に捕らえられた。これらが2006年に地球と遭遇した。 4.2009年しし座流星群:Lyytinen予測に基づく日本での出現予測(内山茂男)  1466年トレイル(16公転)ZHR65?、1533年トレイル(14公転)ZHR60?が地球に接近。 これらを合成した極大は235.535度、11月18日(水)06時28分(JST)。ピーク時は通常時 のZHR20も加えてZHR145?、東京などでもピーク時の半分程度は期待できる! 5.天文功労賞の推薦の件(佐藤勲)(プロジェクターのみ)  選考委員:相馬充氏、中野主一氏、渡部潤一氏など6名。IAUリストへの新群検 出などの功績によりSonotaCoさんを推薦したい。 6.太陽系外から飛来する流星(海老塚昇 重野好彦)(プロジェクターのみ)  過去にハーバード・スミソニアンが写真観測から太陽系外流星を研究しているが、 無いとの結論になっている。UlyssesのPartical counterを使って0.005〜2μmの粒子 を検出した。その後、電波観測で微小流星物質が検出されている。  重野他のII観測から離心率の大きいものを取り出し、誤差の大きいものを削除し て7候補を取り出した。そしてそれぞれに関して摂動の影響を調べて5候補を太陽系 外からの流星ではないかと結論付けた。  標準レンズ+I.I.+HDTVカメラ3台をそれぞれ20〜50km離して配置することにより、 8等までの流星を24万流星/年の検出が出来ると見積もられる。 7.南半球における眼視散在流星の年周変化について(泉潔)  北半球では眼視流星数が春に少なく、秋に多い。南半球では逆の変化が見られるだ ろうと以前より信じられてきたが本当だろうか。そこでIMOの1998年のレポー トを利用して解析したところ、オーストラリアの全データからは年周変化は認められ なかった。MARADA氏、WOOJE氏の観測だけを見ると、6〜8月にやや増加が見られた。 8.写真・CCD・II・電波は何を見ているのか?(小関正広)  流星群は観測方法によって違ってくる。写真観測:明るい流星が多く、空間密度が 低くても流星群と認知される。電波観測:暗い流星が多く、空間密度の低いものは認 知されない。眼視:明るい流星のみで、空間密度の低いものは認知されない。写真・ 眼視と電波では異なる対象を観測している。観測方法により輻射点分布、速度分布が かなり異なる。  かみのけ群は長い期間に渡って輻射点が記録されている。明瞭な集中は見られない。 これらの活動を流星群と呼ぶのか。  今後、CCD、IIの結果も使って解析を続けたい。 9.IIによる流星群カタログ(重野好彦)  IIで観測した同時流星に関して、IAU流星群リストと照合を行った。その結果 12未知群と22既知群を検出した。IAUリストには295群が登録されているが、 毎年定常的に出現していると思われる群は少ないことが分かった。またIIは8等ま での暗い流星を対象としているため、多くの未知群が地球向点付近の高速で暗い流星 であった。  IAUリストは流星群数が多いため全体のイメージがつかみ難い。そこで星図上に プロットすることで観測者に理解しやすくした。加えて多くの研究者に役立てていた だくため、同時流星ビデオ画像(動画像)を希望者に配付することにした。 次回開催予定 2010年2月7日(日) −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 第122回流星物理セミナー  開催 2009年7月5日(日)  場所 渋谷区神宮前区民会館  参加 17名 1.MSS資料集ホームページ(2009年度更新)「 http://meten.net/mss 」 (重野好彦)  2009年度版に更新しましたのでお知らせします。2009.01.18〜05.30間のユニー クアクセス数は59台でした。最近3回の全資料のみを集めたファイルを作りました。 2.同時流星ビデオ画像(重野好彦)  1995年〜2005年に同時観測したHi8テープ160本を全てHi8→DV ファイル変換しました。全部で約6TBになり、6等より明るい流星だけ切り出した ファイルを作りました。合計で579流星で15.6GBになり、DVD−Rに焼い て希望者に配布します。 3.流星の電波観測 〜2009年2月〜6月のデータ〜 (藤由嘉昭)  出現数変化を偏差値として求め、グラフにしてみた。偏差値を求めてみるとカウン ト数では分からなかったことが分かるようになるのではないかと思っている。福井高 専方向アンテナと天頂向きアンテナで、ほぼ同様の結果が得られた。 4.観測輻射点とIAUシャワーリスト(重野好彦)  MSS同時3,787、マクロスキー&ポゼン4,339、IAUシャワーリスト 313を、月ごとに星図上にプロットしてみた。 5.流星群のリスト:IMOの場合(小関正広)  流星群(輻射点)のリストの変遷を紹介する。Cook(1973)のワーキングリストが基に なっている。古典的なリストを参考に写真観測の結果、電波観測の結果を並列して書 き出している。このリストは暫定版の意味合いがあったが、公式に利用されていった。 そしてCookのリストにいろいろな配慮が行われ、削除されたり、追加されたりしてき た。IMOでは30群ぐらいがハンドブックで紹介されている。  従来クロンクのMeteor Showersでも100群ほどしか無かったのに、なぜIAUの リストはいきなり300群も出来てしまったのか?→Jenniskensがたくさん群を作っ た。一連の活動を時期ごとに分けてしまったり、彗星と関連がありそうなものを群に してしまったり、突発的に短時間に数個出たもの、数日かけて少しずつ出たものなど を群にしている。 6.流星の大気減速補正(重野好彦)(配付資料無し)  IIなどを使用した高感度ビデオ観測の結果を見ると写真観測に較べて速度が遅い ことが分かった。速度の遅い流星ほど、写真とビデオの速度差が大きいことから、お そらく大気減速によるものと考えられる。従来の方法で試してみたが暗い流星の大気 減速補正には不十分であった。そこではやぶさ落下の様子を同時観測して速度変化を 詳細に調べ、高々度における高度毎の抵抗係数CDの変化を求めて、流星の大気減速補 正に使用したい。 次回開催予定 2009年10月4日(日) −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 第121回流星物理セミナー  開催 2009年2月8日(日)  場所 渋谷区神宮前区民会館  参加 23名 1.MSS資料集ホームページ「 http://meten.net/mss 」(重野好彦)  MSS資料集をホームページで公開しました。CDでの配付に限界を感じていまし たので、これで少しでも読者が増えてくれればと思っています。今までもインデック スだけ公開しており、検索していくと結局、自分の原稿にたどり着くことがありまし た。最終的には1原稿1ファイルにして検索→閲覧しやすくすることが理想です。 2.ペルセウス群輻射点拡大撮影(重野好彦)  2006年のペルセウス群では170mmF2.4(写野6.0度×4.5度)で 輻射点拡大撮影を行ってみたところ、2〜7等の6流星全ての最大光度が経路前半に あった。2008年は50mmF1.4(写野20度×15度)で撮影してみたとこ ろ、25流星が写り、おおよそ0等より明るい流星は経路後半に、1等より暗い流星 は経路前半に最大高度があると言う結果だった。 3.流星群の記録(小関正広)  1.流星研究概史、2.眼視観測による流星群記録の整理、(1)デニングのカタログ、 (2)ホフマイスターのカタログ、(3)AMSの輻射点、(4)NMSの輻射点、3.写真・ 電波による観測、(1)小関によるまとめ、(2)イェニスケンスによるまとめ、4.検討、 (1)主要流星群、(2)黄道型流星群、(3)地球向点付近の流星群、5.まとめ、(1)流星群 の活動は年々変化するものであり、大流星群を除いては、毎年観測されるとは限らな い。(2)小流星群の分類には様々な考え方が成り立ちうる。(3)流星群に対する固定的 な名称は大流星群だけで十分である。  イェニスケンスのリストはあくまで個人的研究成果であり、それを国際基準とする ことはできない。短縮コードの導入自体に反対である。 4.流星の電波観測報告(2008年7月1日〜2009年1月)(藤由嘉昭)  福井高専方向、天頂方向共に、ふたご群の12/14ごろにエコーカウント数約3 75/日、しぶんぎ群の1/3ごろに約360/日だった。観測地は世田谷で、他の 観測者と同時カウントしている。西の八王子(杉本氏と同時23個)、南の横浜(相 原氏と同時5個、野地氏と同時1個)だった。近い割には思いの他少なかった。 5.系外流星の起源(海老塚昇)  太陽からの距離と、10光年の恒星からの距離の比を考えると、約50万倍あり、 粒子密度は悲観的に少なくなる。そこで粒子を大量に撒き散らす現象を調べてみた。 ・太陽系の通常の流星放出を仮定し、4.4光年離れたところから観測した場合、眼 視にかかる流星数は1個/880億年。 ・原始太陽系の分子雲が構成されていたときのことを考えると、かなりの粒子がばら 撒かれるが、それでも430光年離れたところから観測した場合、1個/9500年。 ・太陽質量程度の晩期型赤色巨星は質量の半分を放出すると言う。ベテルギウス (500光年)から放出したと仮定すると1個/13万年。  と言う訳で、可視光観測による系外流星の起源天体を個別に同定するのは難しそう であるが、銀河中心や腕の方向からの到来する系外流星の組成比は判ると思う。最新 の電波観測では可視光観測より数桁多くの流星を観測できるので、個別に起源を同定 できるかもしれない。上記の見積もりには「異形の惑星(井田茂著)」などを参考に したが、仮定が多くて値には数桁の不確さがある。  海老塚の応答:電波観測では数%が日心速度42.1 km/s以上(1200)20分間であった。例年はZHR5程度である。突発群から 未発見の長周期彗星の検出と地球への衝突を予知できる。 4.しし座流星群1998年の極大時刻後退の1シミュレーション(長谷川隆)  1699年から、テンペル・タットル彗星から流星物質を放出し、1998年の降 交点通過時刻:降交点での動径、降交点通過時の黄経:動径を調べた。ナイストレム 法で木星・土星・天王星の引力を考慮した。まとめ:1998年は流星物質は、ずれてい た。1999年は母彗星の降交点と流星極大はほぼ一致するものと思われる。 5.ポン・ウイネッケ彗星関連群(6月のうしかい座流星群)の「1998年06月の突発」   問題は天体力学的に説明可能?(長谷川隆)  ポン・ウイネッケ彗星の1858年の近日点回帰より、近日点通過毎に15m/sec以下で 流星物質を放出させると、1998年06月の地球の彗星降交点通過時だけ、流星雨が見ら れるようなシミュレーション結果となった。ポン・ウイネッケ彗星の公転周期:6.38年 と木星の公転周期:11.862年とは、およそ1:2の関係にあり、12年周期で突発が ありえる。次回は2010年06月27/28日に見られる可能性がある。 6.流星痕発光メカニズムについての参考資料配布(大西洋)  1.NMS同報での中村卓司先生の投稿(1998.11.28)  2.流星IIの「痕のスペクトル」pp.102-105 7.流星痕スペクトル観測報告(1998年しし座流星群観測報告(1))(鈴木智)  1.機材の仕様            1)可視分光カメラ 2)可視近赤外分光 3)紫外分光カメラ   波長範囲(nm) 370-630 450-900 300-460   波長決定精度(nm) 3 5 4   回折格子(本/mm) 透過型 600 透過型 200 反射型 600   撮像装置 35mmカメラ 冷却CCD 35mmカメラ  2.今回新たに分ったこと   1)可視域  385nm付近の強力な輝線を検出         2枚目以降で支配的になるオレンジ色光が2つの輝線状の発光で構成   2)近赤外域 オレンジ色光が800nm付近まで強く発光   3)紫外域  310nm付近にやや強めの輝線を検出  3.流星痕の分類(私案)          1)流星 2)短痕 3)持続痕 4)永続痕   a)発光寿命 〜ms 〜数秒 〜数十秒 〜数十分   b)エネル 流星の運動 流星の運動 流星の運動 大気の化学    ギー源 エネルギー エネルギー エネルギー エネルギー   c)励起 衝突による 衝突による イオン再結合 金属元素    メカニズム 直接励起 直接励起 触媒サイクル   イオン再結合   d)主な発光物質 Fe;Na;Mg O(3F) Mg;Na等 (FeO;O2;Na   Ca;Si等 MgO)?等   e)備考 尾を含む 新カテゴリ 8.しし座流星群に伴う流星痕の分光観測(阿部新助)  1.発光メカニズム    永続痕は、出現30秒までは、多くの輝線が特徴的である。また、高度93km付近   に連続光成分が卓越し、それより低高度ではNa[I]@569;590nm輝線のみが見られ   る。30秒以上の永続痕では、Na[I]の輝線とより長波長のN[I]?が輝き始めるよう   である。どうも永続痕の鍵は、Na原子が握っているように思われる。例えば、窒   素酸化物である NO2 は、温度約2000Kで連続光放射する。果たして、永続痕の発   光メカニズムは? 今後は、分子輝線も含めて精密なエネルギー計算を行い、温   度や密度といった物理量を求めて考察していくつもりである。また、今年もチャ   ンスがあるので、今度はMCFTSでトライするつもりである。  2.観測装置   カメラ:武藤CV04L   レンズ:ペンタックス50mmF1.4開放  3.分光装置   グリズム:透過型回折格子   MCFTS:マルチチャネル・フーリエ分光器     永続痕の場合、対象が拡散してしまうので、面分光が可能なMCFTSを使用 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 第88回流星物理セミナー  開催 1998年10月18日(日)  場所 渋谷区神宮前区民会館  参加 25名 1.同時流星観測報告(1998.07.27/28-08.01/02)   (観測:重野好彦 重野智子 検出:塩井宏幸)  7月下旬のやぎ座流星群、みずがめ座流星群をオーストラリアでTV同時観測した。 5日間で185同時流星を得た。輻射点は集中した部分もあるが、広く拡散している ことが分った。よって従来の分類方法だけでは、不十分であることが分った。 2.同時流星観測報告(1998.10.08/09)(観測:重野好彦 塩井宏幸 重野智子)  今回の観測は撮影時間JST21:00〜22:48。曇りのため同時流星1個と言う結果でし た。過去軌道表の予想輻射点、地球−彗星軌道間の距離(1/1000AU単位)、速度は長谷 川法によります。1972年の地球−彗星軌道間の距離が近かったことが分ります。なぜ この年に出現がなかったのか不思議です。 3.D.J.Asher and K.Izumi; Meteor observations in Japan: new implications for   a Taurid meteoroid swarm; Mon. Not. R. Astron. Soc. 297;1998;pp.23-27.   (泉潔)  おうし座流星群の母彗星は 2P/Encke である。木星の自転周期とエンケ彗星の自転 周期は7:2の resonance(共鳴) 関係にある。そのため流星物質の swarm(密集部分) が1か所だけ形成される。(母彗星近傍には密集部分が無い)。地球はエンケ彗星軌道 の降交点付近を11月3日に通過し、この近傍で流星群が見られる。この降交点から swarm までの離角(ΔM)が30度以内のとき流星数の増加が見られる。日本流星研究 会や泉の眼視観測結果により、このことが確かめられた。例年ではHR1〜4程度で あるが、swarm近傍ではHR2〜6程度に増加する。ΔMの小さい年度は次の通り。 年:ΔMの関係=1978:+23;1981:-18;1988:+5;1991:-36;1995:+29;1998:-13; 2005:+11;2008:-30。 4.ジャコビニ群速報(橋本岳真)  10月8/9日はジャコビニ群の活発な活動が見られたが、活動期間も長かった。 10月2/3日〜11/12日に出現報告があった。 5.Great Leonid Meteor Shower of 1966; Sky and Telescope; January; 1967.   (大西洋)  アメリカ西部を中心に大出現の報告が寄せられた。主な観測報告は以下の通り。  1)アリゾナ Kitt Peak 13人のチームである。individual observer's count と   説明があり、1人1人の個人計数である。つまり最大1人1秒間に40個。 UT 08:30-09:30 33個/60分 09:50-10:50 192個/60分 11:10 30個/ 1分 11:30 数百個/ 1分 11:54 40個/ 1秒 (この後約20分間続く) 12:31 天文薄明 12:40 30個/ 1分  2)カリフォルニア UT 11:50 10個/ 1秒  3)ニューメキシコ UT 11:45 15個/ 1秒 (ただしこれは3〜4人の合計) 12:00 25個/ 1秒 (同上)  4)コロラド UT 10:53 曇り 11:13 10個/ 1分 11:50-12:15 10個/ 1秒 以上  5)テキサス UT 11:45 intence(激しい)  6)オクラホマ UT 09:30-10:40 157個/70分 (残念ながらこの後薄明) −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 第87回流星物理セミナー 日時 1998年7月12日(日)13〜17時 場所 渋谷区 神宮前 区民会館 参加 31人 内容 1.しし座流星群全国高校生同時観測会計画案 (鈴木文二)  11月17/18日に、高校生のグループが公休を取って、しし座流星群の観測が できるようにしてあげたい。このための活動をスタートさせました。ホームページは 「http://leonids.net/」、メーリングリストへの参加は「admin@leonids.net」です。  1998年のしし座流星群を「多くの生徒たちに体験させたい」と言う思いは、天 文教育・普及に携わる人たちに広がり、熱い期待を背負って実行委員会が発足しまし た。そして天文学の最前線にいる研究者の方々からも続々と支援の言葉が寄せられま した。活動ははっきりとした形となり、日本を代表する学会、研究会の支援を得て、 ここにスタートすることになりました。準備期間は十分ではありません。多くのみな さんの応援で、観測計画を成功させてください。星と共に輝く高校生に期待してくだ さい。  青少年の間で、「理科離れ」があるという指摘が繰り返されています。天文分野で は、子供たちの興味、関心は非常に高く、その要望に答えるために、科学館、プラネ タリウム、そして公開型天文台の数も飛躍的に増加していますが、一方で年齢層が上 がるにつれて利用者が減少する傾向が見られます。また、学校の自然科学系クラブ活 動の沈滞も指摘されています。物理、化学などの分野では、「青少年のための科学の 祭典」などの様々な取組が始まっています。天文分野においては、インターネットや パソコンなどを積極的に取り込んだJAHOUのような取組は始まっていますが、青 少年の活動を積極的に企画・支援するという動きはまだ十分ではありません。 2.スパイラル流星痕 (戸田雅之;小林正人;重野好彦)  スパイラル形状の流星痕の同時観測に成功した。スパイラルは周期4.17msecで、直 径461mの円を描いていることが分かった。この流星物質に生じる遠心加速度と大気抵 抗を求めた。その結果、流星物質はスパイラル運動をしていないことが分かった。流 星物質から放出されたガスだけがスパイラル形状をしている。  非直線流星経路にはスパイラルの他に、カーブ及び分岐がある。力学的な考察を試 みた。しかし大気から受ける力に比べて、運動エネルギーが非常に大きい。流星物質 の運動の変化は、あまり大きくならないことが分かった。 3.文献講読 Meteor stream activity.III by P.Jenniskens (大西洋)  1994年の明るいしし座流星群の出現により、今回のテンペルタットル彗星の回 帰による初めての突発が観測された。満月にもかかわらず、219しし群、82散在 が25時間の眼視観測により、ルーマニア、スペイン、アメリカで観測された。19 66年の回帰のときも1961年(5年前)から出現が増え始めた。  ZHR=ZHRmax * 10^-B|λ0 - λmax| (λ:太陽黄経) の式を過去の観測に 当てはめると以下の通りとなる。    1)ZHRmax=15;000 1966年などは B=30 2 倍 / 14 分    2)ZHRmax= 1;100 1898年などは B= 4.1 2 倍 / 1.8時間    3)ZHRmax= 8 回帰以外では B= 0.2 1.6倍 / 1 日  1966年や、その後の定常時の光度関数は、χ=3.0 と大きい。  これまでの出現パターンを踏襲すると仮定したときの出現予想は以下の通り。    1)1998年11月17/18日21時(UT);06時(JST) 〜10;000(ZHR)    2)1999年11月17/18日06時(UT);15時(JST) 〜 5;000(ZHR) 4.野辺山45m電波望遠鏡によるしし座流星群母天体の観測 (長谷川均)  1998年1月16日に、野辺山45m電波望遠鏡にボロメータアレイ(NOBA)を用 いて33年ぶりに回帰した、P/Tempel-Tuttele彗星の150GHz(λ=2mm)連続波観測を行 った。同彗星は、1998-99年に大出現することが予想されている、しし座流星群の母 天体であり、流星物質であるミリメートルサイズの塵を大量に放出していることが期 待されていた。ミリメートルサイズの塵からの熱輻射は、光、赤外と比較してミリ波 電波領域での観測が最も適している。観測時に太陽から1.20AU、地球からは0.36AUの 近い距離にあり、核から放出されたばかりの塵からの熱輻射が受かることが期待され たが、ビームサイズ(12arcsec)内で上限値3σ=6.6mJy以上のシグナルは受からなか った。この上限値を塵の熱輻射モデル(Jewitt and Mathews;1997)を用いて塵の質量 の上限値に換算すると、3.9*10^9kgとなる。同じモデルを使って、この質量の上限値 を他の彗星の観測結果と比較してみると、Hale-Bopp彗星より2桁少なく、Hyakutake 彗星と同程度であった。流星群の母天体であるP/Halley(オリオン座流星群)よりは1 桁少なく、P/Swift-Tuttle彗星(ペルセウス座流星群)の1/20程度であった。このこと は、Jenniskens(1994;1995)による流星群の観測から見積もられたstream内の質量で も、しし座流星群はオリオン群、ペルセウス群と比較して2〜3桁流星物質が少ない こととも一致する。 5.The visual observation of the outburst of the 1998 June Bootids in Japan.   (Y.Hashimoto and K.Osada)  1998年6月27日夜、6月うしかい座流星雨の突発的活動が長田和弘、下地武 史両氏によって観測された。活発な活動は薄明中の11時15分(UT)から未明の19時00分 (UT)まで観測された。出現数はZHR=40.9〜269.3の範囲で、極大は21時台、ZHR=269.3 と推定された。輻射点はα=221度;δ=+51度(J2000)であった。この流星雨の速度は遅 く、暗い流星が主体だが火球もたくさんあった。流星は主に黄色で、0等級以上の明 るい流星には全て痕があった。明るい流星の中には末端爆発など急激な光度変化を見 せるものがあった。しかし、通常の流星は単調なプロフィールをしていた。その後、 NMS会員によって追跡観測したところ、7月2日までわずかな出現が断続的に観測 された。出現時期と輻射点位置から、1916年に流星雨が出現した6月うしかい座流星 雨と同様の出現と思われる。 6.6月うしかい座流星雨と7P/Pons-Winneche彗星   -Tisserand invariant で探る可能性- (橋本岳真)  1998年6月27日夜、ZHR=269.2におよぶ流星雨が出現した。日本で観測され た輻射点位置はα=221度;δ=+51度で1916年に出現した6月うしかい座流星雨 (α=231度;δ=+54度;HR=100 Denning;W.F.;1916)の再来と思われるが、母天体候補の 7P/Pons-Winneche彗星は木星摂動によって現在では近日点距離が1.26AUまで離れてし まい、地球に接近しなくなったため、現在の彗星からは流星雨が生じなくなっており、 今回の流星雨が7P/Pons-Winneche彗星によるものかどうか疑問視されている。そこで 今回は惑星摂動によって軌道が変化してしまった彗星が同一であるかどうかを判定す るTisserand invariantを応用して、観測された輻射点から予想される軌道が、 7P/Pons-Winneche彗星と関係があるかどうか可能性を見ることにした。  T = a^-1 + 2 aj^-3/2 * (a(1-e^2))^1/2 * cos i    a:軌道長半径 aj:木星の軌道長半径 e:離心率 i:軌道傾斜角  木星の摂動を受けて軌道が大きく変化してしまった短周期彗星の同定に用いる値T は、ほぼ一定で±0.010以上大きく変化しない。 7.TV同時観測によるしぶんぎ座流星群の輻射点分布と軌道   (田中正一;塩井宏幸;重野好彦)  1996年、1997年と連続して、1月3/4日にTV同時観測を行い、しぶん ぎ座流星群の流星を33個観測することに成功した。この2年間の観測結果について、 輻射点分布と光度、軌道の関係について考察を行った。その結果、光度による輻射点 分布の差異はないことが分かった。また、近日点距離、軌道傾斜角と輻射点分布には 相関関係があり、その分布からしぶんぎ群の流星物質の拡散傾向を予測できることを 示した。 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 第86回流星物理セミナー 日時 1998年4月19日(土)13〜17時 場所 渋谷区 神宮前 区民会館 参加 25人 内容 1.文献講読 Meteor stream activity by P.Jenniskens 最終回 (大西洋)  5.他の小流星群 45小流星群のZHRグラフを示した。いずれの群も主要群同様   に単一の指数関数で良く出現数を表せる。  5.1.各流星群についての考察 出現数が少なすぎて極大を検出できない群、観測数   が少ない群など、細かな解説がある。  5.2.流星群軌道の広がり 39群について Δt(AU)=0.0152/B のように流星群軌道   の広がりを定義する。分布を調べると 0.08AU にピークを持つ。流星群軌道の中   心から 0.08AU 離れたところで出現数が e^-2 すなわち 0.14 倍に減少する。ま   た流星群軌道の広がりは対称(円形)である。  6.流星群全質量の推定 ZHRの値から空間密度を推定し、流星群の全質量を求め   る。  6.1.推定方法 Hughesらの方法に従った。  6.2.結果 各群の推定値と文献の値との比較を示す。ひどい場合には3桁もの差が   ある。  6.3.考察 見落とし率、地球軌道との交わり方、流星の明るさと質量との関係式、   光度係数の誤差により、推定値は大きな影響を受ける。  7.結論 16人のアマチュア観測者による眼視計数観測結果を集計した。全ての流   星群の出現数は極大前後で単一の指数関数的な増減を示した。ふたご、しぶんぎ   を除くと極大前後の増加、減少速度は同じだった。ペルセウス以外は副極大はな   い。    流星群軌道と地球軌道の交わる長さは 0.08AU であった。この距離は流星群が   出現する母彗星軌道と地球軌道の距離の最大値と一致している。 2.眼視輻射点観測 (重野好彦)  日本流星研究会(NMS)に報告された眼視観測による輻射点を調査した。星図上に プロットし、同時観測から得られた輻射点と比較した。また眼視による角速度と実際 の観測速度との関係を調べた。さらに小惑星関連の流星群の検出を行った。その結果、 簡単な観測方法にもかかわらず小流星群の検出に有効であることが分かった。 3.流星痕スペクトル観測報告 (鈴木智)  1.はじめに 本研究の目的…流星痕発光メカニズムの解明        アプローチ…持続痕の良質なスペクトルの取得、発光物質の特定  2.機材 可視分光写真…精度±2nm以下 フィルム:T-MAX3200(EI25000)      可視近赤外分光CCD…精度±5nm以下 Kodak KAF-0400(512*768ピクセル)  3.輝線同定方法 波長からだけでは困難…約60本/nmもある          仮定…a)流星痕の輝線は、流星の輝線としても観測される             b)流星の尾(wake)として観測された輝線との相関は高い  4.まとめ 成果…可視分光写真3個、可視近赤外CCD2個          660nm付近に新たな輝線を確認       輝線…MgI(1)(2);NaI(1)(6)の2原子、4輝線を同定          この結果は従来の直視分光観測の定性的な結果と一致する  重野コメント…鈴木さんは、写真を使用した分光観測に加えて、冷却CCDを使用 した分光観測を開始しました。冷却CCDは写真(EI25000)よりも感度が高いとのこと です。  実は重野も痕スペカメラを検討してみました。鈴木さんから教えていただいた島津 のグレーティングは85,000円です。またグレーティングホルダーを作成して配 布しようか、などと考えました。しかし輝線からの物性調査の困難さを考え、悩んで いました。鈴木さんは新たに冷却CCDを導入し、また一歩先に進まれました。ちょ っと手が出なくなって来ました。 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 第85回流星物理セミナー 日時 1998年1月11日(日)13〜17時 場所 渋谷区神宮前区民会館 参加 29人 内容 今回は観測をしない天文学研究として2件の講演をお願いしました。 1.流星の古記録調査 渡辺美和  配布資料から:天文現象の古文献からの調査としては、その代表的なものとして、 国内では神田茂氏の中世までの整約、そしてそれを継承した大崎正次氏の近世のまと めがある。しかし、近世日本の史料からの収集はまだ少なく断片的である。大崎氏の 記録集も、筆者が最終的に目的としている、江戸時代の日本の天文現象の分析には不 十分であった。このような背景を基に、筆者は1993年以来、特に地方に残された 近世の文献から、天文記録の収集作業を行っている。  多くの自治体による自治体史の編纂が進み、以前に比べれば、史料に出会う機会も 増えている。特に都内には各地郷土史が比較的集中し、容易に閲覧できる。検索した 史料の代表的なものは各地の庄屋などが記載した日記である。またその土地の年代記 的なものも多い。  すでに調査した史料数は1,037になる。史料の中で天文現象記録の事象として は彗星が最も多く、総記録数約900のうちの半数を占める。その次に位置するのが 流星であり、約250例だ。流星記録の中ではやはり火球が多い。これらの多くは単 独に夕方または明け方に見られたもので、音を伴っている例も多い。  次に多いのが1862年(文久二年)のペルセウス座流星群がたくさん見られたとい う記録だ。実に23例に達している。その他1798年(寛政十年)旧暦九月末ころの 流星雨の記録が2例ある。また隕石に関する記述のある記録も数例見つかった。  これら流星現象は大抵は「ひかりもの」と呼称されている。他の呼称としては「天 火」「火玉」などである。  これまでに収集された記録を基に整理を始めている。まだ並行して収集の作業を続 けながら、データベース化を行い、順次事象別にまとめを加えつつ総合化をして行き たいと考えている。史料に気付かれた方々からの情報提供もぜひお願いしたい。 2.木星スケッチの古記録調査 田部一志  配布史料(ついに見つかった衝突痕跡:天文月報1997.6;pp.266-272)から:天体望遠 鏡が発明された1610年代以降、木星は多くの天文学者、観測者によって最も頻繁 に監視され続けた惑星である。しかし1870年代以前の木星に関しては記録自体が 極端に少ない。調査しようとすると世界各国の歴史のある天文台を尋ね歩いて調査す る方法しか残されていない。  この作業を地道にやっていたのが北アイオワ大学の Thomas Hockey である。彼は 木星への過去の衝突痕跡について既に2編の論文を発表しており、天体衝突痕跡には 否定的である。  木星の大赤斑は300年以上も観測され続けていると信じられている。これは C.R. Chapman がカッシニの1600年代のスケッチに描かれている、いわゆるパーマネン トスポットを現在の大赤斑と同じものではないかと言い出したことに端を発している。  カッシニのパーマネントスポットは現在の大赤斑よりやや小さいものの、大赤斑と 同じ南熱帯に存在し、断続的ではあるが1665年からカッシニの死後の1713年 まで観測されている。一方現在の大赤斑の古い記録は1831年までしかたどること ができない。途中のブランクが120年もある。1700年代の観測記録に大赤斑の 姿を見い出せれば300年永続説は有望になる。  1996年7月パリでSL−9の衝突に関する会議が開催された。その際に古記録 調査を行った。ムードンサイトでは古い文献をコンピュータ端末で検索することがで きる。ムードン天文台の1階は惑星と彗星関係の古い映像やスケッチなどが集められ ていた。1610年から1850年頃までの約100枚のスケッチをコピーしてもら った。  パリサイトの図書室にはさらに古い文献があるという。ここは用紙に必要事項を記 入して出してもらう。 A.S.Williams のおそらく世界で初めて書かれた木星表面模様 に関する書籍を閲覧した。そして17世紀の観測記録を2〜3注文してみると問題の Cassini1692 が出てきた。1692年12月5日に黒く丸い痕跡があり、14、15、 16、19、23日の模様の変化が示されている。  南緯5度に直径6度の円形の痕跡を作り、シミュレートすると、スケッチの時間変 化とほぼ適合することが分かった。カッシニ自身はこの斑点について次のようなこと を記している。(古代フランス語から日本語への翻訳はNMS同報会員の石井みちを さんによるものです)。   1)突然丸い斑点として現れたので驚いた。   2)非常に黒かった。   3)太陽黒点のようなものではないか?  状況証拠としては、ほとんど衝突痕跡と考えられる。1000年に1度と言われて いた衝突の頻度であるが、実際には300年に1度くらいの割合で起こっているので はないかと思われる。 3.同時流星観測報告(1997.10.31/01 11.17/18 12.03/04) 重野好彦  天文回報1998年2月号の原稿と同じものによる口頭発表です。 4.しし座流星群の活動期間の考察(第1報) 重野好彦  しし座流星群の活動期間は一般にはかなり短いと言われている。例えばクロンクの Meteor Showers では11月14〜20日となっている。MSS−WGのTV観測結 果を使用して検証した。その結果、活動期間は少なくとも1か月程度はありそうだ。 まだあまりにも観測数が少ないので、今年、来年と観測を続けたい。 5.P.Jenniskens: Meteor stream activity 担当:大西洋  前回までのところで、眼視観測による個人係数も含めた正確なZHRが求められる ようになった。今回のところは多くの流星群の極大前後の流星数の増減の様子を調べ ている。ペルセウス群やふたご群のように流星数の多い流星群の場合には多少複雑な カーブを描く。しかしほとんどのZHR10以下程度の流星群の場合には、極大まで の流星数の増え方と極大以降の減り方は、極大をはさんで対称形のカーブとなる。こ れを式で表すと以下となる。(本文では8式)。ZHRmax:極大時のZHR、B:増加及び 減少の係数、λt:求めたい太陽黄経、λmax:極大時の太陽黄経。   ZHR = ZHRmax * 10 ^ -B|λt - λmax| log(ZHR) = log(ZHRmax) -B|λt - λmax|  つまり横軸を太陽黄経(λt)とし、縦軸をZHRの常用対数とする。そのとき極大 までの増加は直線で表すことができ、直線の傾きは B である。また極大からの減少 も直線で表すことができ、直線の傾きは -B である。そしてほとんどの流星群で、増 加時の B と、減少時の B は同じ値で表すことができる。つづく。